究極の親ガチャ? ロシア軍戦死者はシベリア、極東出身が多数という現実

 ロシア国防省が3月25日に公表した戦争での死者数は1351人。もちろんそんなに少ないわけはなく、西側は約1万5000人以上と見込んでいる。

 多くの死傷者を出したのだから、補充をしなければいけない。そしてその〝草刈り場〟になっているのが、ロシアでも〝最果ての地〟であるシベリアと極東なのだという。

「ロシアはモスクワを本部とする中央連邦管区を含め、全体として8つの連邦管区から成っています。もともと戦争の初期段階から、極東の軍がウクライナを目指して移動していることが日本の北方でも観察されて報じられていましたが、これにさらに増員を加えるべく、主にノヴォシビルスクを本部とするシベリアとウラジオストックを本部とする極東の2つの連邦管区に対して、毎週200人の兵員を集めるようモスクワ中央から求められているとイギリスなどで報じられています」(全国紙記者)

 ロシア全土を地図で見た場合、このシベリア・極東の2区だけでその右側半分以上を占めている広大な土地だ。そしてこの土地は冷えており貧しい。一方、モスクワのある中央管区はロシアの西の端、南北の真ん中に位置する。だからロシアという国は、東側に広大な後背地を有した、極端に中心が西側に偏った国と言える。そして先の報道では戦闘員の補強は東から行っているのだという。

 だからあのブチャでのジェノサイドも、極東ハバロフスクの「旅団」が行ったとされていて、そこで合点がいく。わざわざ東の端にいる人間を西の戦地に送り込んでいるからだ。つまり、地理的に縁遠い人間を徴兵しているから士気は低く、逆にやる時はエゲツない殺戮となって、今の戦況と重なる。また徴兵されない中央の人間には情報が伝わりにくいし、心理的に痛みにくいという効果もある。

 そしてその背景には「地方の格差=経済格差」という実情も加わる。

「モスクワの平均月収が11万ルーブルで、シベリアや極東の少数民族からなる地域は月収3〜5万ルーブルほどともいわれています。一般兵士は17万7000ルーブルの月の手当てが保証されているので、彼らにとっては良い〝出稼ぎ〟になるから人も集まるというわけです」(同)

「生まれた地域で差別されるのはおかしい」。年の半分を雪に閉ざされる新潟に生まれ、かつ小卒で学歴にも恵まれなかった田中角栄が首相にまで上り詰めるうえで根本にあった考え方がこれだ。今で言う「親ガチャ」みたいなものだが、ここに「辺境」という要素も加わるから、「生まれガチャ」とでもいうか。そして現在のロシアの戦争は、この「生まれガチャ」でハズレを引いた人の犠牲を土台に成り立っている。

 ただそうした現状が変わるかもしれないのが5月9日だ。この第2次大戦の戦勝記念日に戦線布告をするかどうかはともかく、いずれにせよモスクワを含む中央も挙げて戦争に臨むよう舵を切り替えるしかないのがプーチンが直面している現実だ。となると、今度は中央からも前線に兵を送り込むということも含め、これまでは〝地方〟で行われていた戦争にいよいよモスクワも巻き込まれるかもしれない。

(猫間滋)

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