「今や2人に1人がガンになる」とはよく聞くが、「それって、半分はならないってことでしょ」と、かつてのクワマンなら考えたはずだ。だが大腸ガンを患って、人生観が一変。実生活に至るまで、まるで別人のようになったという。発覚から生還までの軌跡を、90分間にわたって語り尽くした。
「えっ、痩せすぎじゃないかって? 医者に聞いたら『今の体重がベストだ』って。本当にBMIの数値もちょうどいい。先日の検査でガンも見つからなかったし、この状態を4年キープできたら寛解です」
今から約1年前、桑野信義(64)は、大腸ガンの手術を受けた。開口一番、術後の経過が順調であることを語るが、20年9月のガン発覚以前の体調は最悪な状態だった。
「その2〜3年前から体調はおかしかった。便意を感じてトイレに行ったはいいけど、なかなか出ない。踏ん張って、ようやく出てもウサギのフン。よく『ウサギのフンのような』って言うけど、『ような』どころじゃない。硬いのがコロッって、ウサギのフンそのもの。で、トイレから出たら、またすぐに行きたくなって駆け込むと、今度はユルいのが‥‥。こんな状態だから、ライブ会場に着くと、まず 『トイレはどこだ?』と探すようになっちゃってね。
家族からは『早く医者に行きなさい』と言われたけど、『なんで後ろの穴を人に見せなきゃいけないんだ! しかも、お金払って』と思っていたぐらい、医者が嫌いだったのね。10年ほど前に糖尿病がわかったのも、尿管結石で担ぎ込まれて検査されたから。自分から病院に行ったわけじゃない。ただ、その糖尿病で定期的に血液検査を受けていたので、何か異変があれば医者が指摘するはず。何も指摘されないんだから、俺は健康体なんだと自分を信じ込ませていた。こう見えて、意外と臆病なんですよ。今はネットで症状を入れて検索すると、病名が出てきたりするでしょう。それができなかったもんね。自分が大きな病気だとわかるのが怖くて、ただただ現実から目を背けていたんです」
当然ながら、症状は改善するわけがなく悪化していく。排便後、トイレットペーパーに血がつくようになり、駅の階段で息切れ、さらには、めまいまで‥‥。貧血を起こしていたのだ。ここで、やっと桑野は医者にかかる決意をした。
「内視鏡検査で大腸に3つポリープがあることがわかったんです。うち2つは小さく、内視鏡で取り除けたけど、もう1つは内視鏡では取れないほど大きく育っていた。『先生、大丈夫ですよね』と聞いたら『うん』って返事をくれなくて、ただ『がんばりましょう』と。結果、そいつが直腸にできたガンで5段階のうち悪い方から2番目、ステージⅢbでした。便の通り道を3分の2ぐらい塞いでいて、それは出ないわけですよ。蓋をしていたんでしょうね。いろいろ検査して、最終的にはリンパ節にも転移していると宣告を受けて、もう目の前が真っ暗でした」
桑野信義(くわの・のぶよし)1957年生まれ。80年に「シャネルズ」のトランペッターとしてデビュー。その傍らで数多くのバラエティー番組に出演するなど、コメディアンとしての一面も持つ。昨年3月に大腸ガンの手術を受けたことを公表。その4カ月後に芸能活動を再開し、昨年末の紅白歌合戦で見事な演奏を披露した。
*桑野信義「大腸ガン」からの生還を語り尽くした【2】につづく