「財政資金効率化の観点から布製マスクの政府在庫について、ご希望の方に配布し、有効活用を図ったうえで、年度内をメドに廃棄を行うよう指示を致しました」
参院本会議閉会を受けた21日、ようやく8000万枚超もの在庫がダブつく「アベノマスク」の廃棄を決めた岸田文雄首相。アベノマスクは昨年4月、当時の安倍晋三首相が全世帯に配布すると表明。別に配布する介護施設向けなどと合わせて、国が約2億9千万枚を調達したもの。ところが、世帯配布が始まる頃には市販の不織布マスクが店頭に並びはじめ、布製マスクのニーズは薄まってしまった。
「布製で飛沫の遮断性能に疑問があり、また、小さすぎるとして大不評。結局、介護施設向けなどが大量に余り、今年3月末時点で3割近い8272万枚が倉庫に残る状態となって、保管費用に約6億円かかっている。政府は『災害備蓄や地域住民への配布などで活用していただく』と説明しているが、引き受け手はほぼない状態。与党内からも廃棄処分しか道はないだろう、といった声が上がっている」(政治部記者)
しかも、20年度決算の概要報告によれば、厚労省がアベノマスクの検品を実施したところ、約7100万枚のうち約1100万枚、約15%に汚れの付着や髪の毛の混入が認められ、不良品だったことが判明。1枚あたりの調達費用が約140円であることから、不良品を作るのに15億円以上も費やしたことになる。
「ただ岸田首相としても、これを問題にして安倍氏の機嫌は損ねたくない。とはいえ安倍氏の言いなりとも思われたくもない。事前に安倍氏に通知して配慮しながらも、岸田氏は安倍氏の象徴であるアベノマスクを強制廃棄することによって、『負の遺産』を断ち切るという強い姿勢を国民に見せることはできた」(同)
この報道を受け、ネット上には《安倍氏に忖度しない岸田氏の英断に拍手!》《この調子で安倍政権の闇をどんどん切り崩していってください》というエールとともに、《マスク生産、輸送、保管、廃棄費用は全て税金!これ以上国民の血税を無駄にするな》《文書交通費を廃止して、それを補填に回すべき》《毎年交付される政党交付金で自民党が全額買い取るべきだ》《この際、アベノマスクにかかわった企業や個人を明らかにしてくれ》といった批判が噴出。中には《廃棄マスクは是非、安倍晋三宅へ配布してください》《安倍元総理に全て買い取ってもらうのが最善策では》《国民が要らないといった負の遺産をごり押しした安倍元総理が引き取れ》といった怒りの声もあった。
前出の政治部記者が語る。
「国の調達事業、しかも医療・衛生品のマスクで不良品が1割を超えていたなど前代未聞。しかも岸田首相の説明によると、厚労省や納入業者の検品費用などとして、新たに約20億円を要したというからなんともはや。検品は通常、納品業者側が行うもの。それをなぜ、税金を使ってする必要があるのか。『アベノマスク』については、マスクの材質や形状も含め、誰が、いつ、どのような判断で受注業者を決め、どのように金が動いたのかをもう一度きちんと精査する必要がある。はたして岸田氏にそれができるかどうか。首相の真価が問われる時だと思います」
莫大な血税が注がれた「アベノマスク」事業。さて、その真相が解き明かされる日は来るのか。
(灯倫太郎)