実際、フランスではいち早く「ワクチンパス」の導入に踏み切ったものの、依然として反ワクチンデモが全国的に繰り広げられるなど、拒否反応が根強いという。
「フランス人の国民性に、常に反権力的なニヒリズムがベースにあるのは間違いない。政府の押し付けには従わない。あくまで自分で決めるという『自主自由』の精神が、ワクチン接種を拒否する人たちに通底している思想です」(コーディネーター)
一方、イスラエルでもブースター接種が始まっているとはいえ、2回目までの接種率は国民の約60%。単純に残りの40%は打たない選択をしている「拒否者」なのだ。
「当初は〝ウルトラオーソドックス〟たるユダヤ超正統派が、先端技術の使用や体内に取り込める物質を制限する戒律で、反発の動きを見せていました。それでも、政府が『ラビ』と呼ばれる指導者にワクチンの有効性を訴えることで、警戒心を解きました。むしろ頑なに拒否しているのは、地方に住む自然派のヒッピーたち。自然由来でない異物を体内に入れることにアレルギーがあるようです。中には、イデオロギー活動の延長で打たない人もいますが‥‥」(山田氏)
政治的なポリシーが「反ワクチン」に拍車をかけているのは、接種率50%台を抜け出せずにいるアメリカとて同じこと。その先導役が他ならぬトランプ前大統領の支持者にあるというのが、世界の混迷を象徴していよう。
「トランプが率いた共和党の支持者は、コロナを過小評価する傾向があります。当然、ワクチンを打たない人も多い。しかも、その思想を煽るように『磁石やGPSが組み込まれている』『ビル・ゲイツがマイクロチップで人の思考を監視する』などワクチンの陰謀論が拡散され、極右系のメディアがワクチン接種反対を訴える。常識外れの言説も多いですが、トランプ政権の名残で、どこか正当性を帯びてしまったんです」(山田氏)
さらに、いただけないのは「反ワクチン」を生業にする不届き者の存在だ。米国内でワクチン忌避を扇動しながらビッグマネーを手にしているといい、
「いわゆる『フェイクニュース』によりワクチンの怪しい情報を垂れ流して約40億円規模の収益を生む産業になっています。SNSを中心に活動する『インフルエンサー』の代表格ばかりで、ケネディ元大統領の甥ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏は、約3億円を稼いだといいます。ちなみに日本でも、某人気アイドルの母親が活動するスピリチュアル団体が、『反ワクチン』の陰謀論をエサにした講演会で荒稼ぎしているようです」(科学ジャーナリスト)
そして、ワクチンを避ける黒人も少なくない。政府が推進する医療行為そのものに不信感があるようで、拒否する人が後を絶たないという。
「過去に人種差別がひどかった時代に『タスキギー梅毒実験』という梅毒の臨床研究があり、その教訓が世代をわたって語り継がれている。実際、研究とは名ばかりで、梅毒患者の黒人たちに告知や適切な治療を施さずに経過観察する非人道的な人体実験でしたからね。ワクチン推進キャンペーンとして、元メジャーリーガーのハンク・アーロン氏を広告塔として起用しましたが、モデルナ製のワクチンを接種した17日後に急死。皮肉にも、疑心暗鬼を増す結果になりました」(科学ジャーナリスト)
人種差別や経済格差といったアメリカの病巣が、コロナワクチンを巡っても「分断」を生み出しているというのである。
*「週刊アサヒ芸能」9月23日号より。(3)に続く