マリナーズの菊池雄星投手がアスレチックス戦に先発し、4勝目を挙げた(現地時間5月24日)。しかし、7回途中に「背中」の異常を訴えて降板している。この降板に対し、米メディアは「深刻な雰囲気ではなかった」と、チーム発表の様子を淡々と伝えるだけたったが、日本では違った。「背中」と聞いて、2010年夏の甲子園での悲劇を思い出した関係者も多かった。
「夏の甲子園の準々決勝で4回までパーフェクトに抑え込んでいたんですが、『腰痛』を訴え、降板しました」(スポーツ紙記者)
のちに菊池自身も明かしているが、その高校生活最後の夏は「背中の違和感」を抱えていて、「たいしたことないだろう」と思っていたら、大会中、腰に激痛が走ったという。さらに検査を受けてみたら、左肋骨も骨折していた。プロ1年目には左肩も痛めているが、それは「背中」の痛みからバランスを崩したもの。菊池の故障は背中から波及していくというのが、日本の関係者たちの解釈だ。
米国人ライターが降板したときの様子をこう説明する。
「顔をしかめ、右手で背中を押さえたんです。左腕でタイムのジェスチャーをしながら、自軍のベンチに目をやり、サービス監督がマウンドに走っていきました。自ら交代を申し出た感じでした」
そう聞くと、症状に関する球団発表が「深刻そうではなかった」という米メディアの印象とは異なるが…。菊池にとって、「背中の故障」は避けては通れないものでもあるようだ。
「菊池がこだわっているのは、直球なんです」と、西武時代を知る複数の関係者が語っていた。この直球が「背中の痛み」の原因にもなっているようだ。往年の速球派投手は脇腹を痛めるケースが多かった。菊池の場合は背中(背筋)に出る。しかし、脇腹、背中を痛めるのは速球派投手の宿命のようなもので、それは好調さと紙一重。好調なときほど痛みにつながりやすい。
「この日の菊池は試合序盤から95マイル(約153キロ)以上をコンスタントにマークし、最速は98マイル(約158キロ)です」(前出・同)
今季の菊池は直球のキレが良く、「力勝負」に出る場面も見られた。背中の痛みは好調さが原因でもある。10代のころはそこから肋骨、左肩と故障個所を広げてしまったが、メジャーリーガーに成長した今回はそれを防いでもらいたい。絶好調と故障は紙一重、大事を取って、登板間隔を空けて再スタートするのも悪くないと思うが…。
(スポーツライター・飯山満)