「中止」59%。5月7〜9日に読売新聞が行った、東京オリンピック・パラリンピック開催の是非を巡る世論調査の結果数値だ。かたや、観客制限16%と無観客23%の双方を合わせても、「開催」支持者は39%。しかも当の開催地である東京に限ると、反対の声は61%に達する。東京オリパラの開催は、完全に逆境に立たされている。
それはそうだろう。菅首相が「GW中、いったん人の流れを止める」と宣言して延長中の非常事態宣言の真価が問われるのはいましばらく先だが、現時点で第4波はとどまる様子を見せていない。外出自粛の疲れはもはやピークに達している。今月の17・18日に行われる予定の広島での聖火リレーに合わせて来日する予定だったIOCバッハ会長の来日も延期され、少なくともそれまではオリパラ開催の“意思”は玉虫色にしておきたい政府は、国会でものらりくらりの答弁を繰り返している。
国中に「いったいどうするんだ!」という気分ばかりが醸成される中、そんな世間の声を代弁するかのごとく、「中止」を求めるネットでの署名活動が始まったかと思えば、一方で「開催」の意思を決定づけようと、同じく「賛成」の声を集めるネット署名が始まって相対峙する事態となっている。
戦いの場は、有名署名サイトの「Change.org」。「中止」を呼び掛けているのは、元日弁連会長で東京都知事選への出馬経歴もあって一般にも広く名の知れたリベラル派弁護士の宇都宮健児氏。これに対抗して「開催」を訴えるのが、明治天皇の玄孫(やしゃご)としてテレビにもよく登場する保守派の言論人の竹田恒泰氏だ。前者は5月5日から、後者は8日から署名集めを開始し、目下、賛同者を募集中だ。
双方の理屈を比較してみると、反対派は「命や暮らしを危険にさらす」ので「中止で利用可能になった資源で命や暮らしを守」って「国内外の反対の声に耳を傾ける」べきとし、賛成派は「開催の模索は国際的義務」なので「最高レベルの対策」を施してこれに臨むべきで「中止に科学的根拠」はないとしている。
「後から始めた竹田氏のページを読むと、署名活動を始めた理由として、水泳の池江璃花子選手の言動に開催の是非を問う踏み絵を課すかのような論調が世の中にあることに対し、それとは別にきちんと開催賛成の声を確立するためといったことが書かれています。ただ、『宇都宮氏が先に始めた署名活動がスタートからわずか32時間で10万筆を集めたといった報道があったがそれとは関係ない』とわざわざ宇都宮サイドの動きに言及している辺りは逆に対抗心むき出しとも受け取れます」(週刊誌記者)
この激突、共に50万人の目標に対し、11日時点で「中止」派が326,207人、「開催」派が48,545人の賛同を集めている。読売新聞の世論調査通り、やはり「中止」優位は動きそうにない。
(猫間滋)