百貨店は空間も売る時代ということか。丸井が東京・吉祥寺にシェアハウスをオープンさせた。
物件は丸井吉祥寺店の後方施設などで使っていた建物をリノベーションしたものなので、店と直結している。だからその名も「MARUI TOCLUS 吉祥寺」で、読んだ音の通り「マルイと暮らす」というもの。だから、丸井の中で足りる買い物ならば外に出ないで済む。2つのラウンジやルーフテラスなどを使用できるのも魅力。吉祥寺駅までわずか徒歩2分の好アクセスだ。全43室で、シェアハウスなのでトイレ、シャワー、キッチンラウンなどは共用だ。家賃は管理費・共益費込みで7万8000〜8万4000円。3月15日から入居募集を開始している。
「丸井がシェアハウスをオープンさせたのはこれで2軒目で、1軒目は19年に東京・高円寺に建てています。実はもともと賃貸マンション事業も手掛けていて、07年に会社が持ち株会社に移行するに当たって子会社として独立した『マルイホームサービス』では首都圏で7000の物件を擁しています」(経済ジャーナリスト)
丸井と言えば、バブル期を背景にファッションブランドを販売、おカネはないがオシャレを楽しみたい若者向けにカード事業を行うという2本柱をイメージするが、現在の青井浩社長の下、ビジネスモデルの転換を図り、仕入れビジネスからショッピングセンター型の賃料収入モデルにするなど、時代に合わせたビジネスを展開してきた。そして今度はシェアビジネスに取り組むということだろう。さらにこの物件、電力は100%再生可能エネルギーというから、持続可能性も取り入れている。ただし実際の電力供給は5月からだという。
「異業種からの住宅事業への参入と言えば、松下のパナホームやトヨタのトヨタホームが昔から有名ですが、家電と住宅といった隣接する需要を取り込もうということで、比較的最近でもヤマダ電機がエス・バイ・エルと組んだりリフォーム会社を買収して住宅事業に参入したり、同じ家電量販店のエディオンも不動産売買の仲介などを行っています。また意外なところでは、ソニーが子会社のソニー・ライフケアで16年から介護付有料老人ホーム事業に参入しています」(前出・ジャーナリスト)
あらゆる分野で既存のビジネスモデルにしがみついていたのでは企業も立ち行かなくなっている。売れるモノなら何でも売るという時代なのかもしれない。
(猫間滋)