政府は12月21日に来年度の21年度予算案を閣議決定、3年連続の100兆円越えで、新型コロナウイルス対策の予備費5兆円や国土強靭化の公共事業、過去最高になった高齢化による社会保障や防衛費など、歳入の4割を借金に頼る国債依存度の高さから、財政状況の悪化ばかりが目立つこととなった。
「あれもこれも増額の予算案でしたが、その中で変わったものとして、宇宙・航空関係の研究開発費も約570億円増額の約2150億円となっています。衛星を打ち上げるための主力ロケットのH3ロケットの開発の42億円や観測のためのレーダー衛星開発の52億円に、もちろんはやぶさ2の関連費も盛り込まれていますが、とりわけ目を引くのは、人間の月面着陸、つまり有人月探査事業に513億円という大きな予算が割り当てられていることです」(全国紙記者)
この11月にも野口壮一さんが民間宇宙船のスペースXに搭乗して宇宙に旅立ったばかりだが、今度は日本人が月に降り立つことになる。この計画は、7月に日米で行われた共同宣言に基づくものだ。
「アメリカはアポロ計画以来、約半世紀の後に有人月探査を行う『アルテミス計画』という計画を進めていますが、関連予算をつけたのは、この計画に日本も参加するという前提があるからです。計画は最終的には、新しい宇宙ステーションの『ゲートウェー』を建設して継続して月面探査を行おうというもの。具体的な役割分担は今後、詰めていくことになりますが、日本は技術的にこれに協力することでその見返りとして探査に日本人を送り込むチャンスを得るということで話が進んでいます」(週刊誌記者)
同じ日、文部科学省は宇宙航空開発研究機構(JAXA)に過去最高の2140億円を割り当てるとした。予算が膨らんだ項目には情報収集衛星や宇宙ゴミ監視衛星の開発などが含まれるが、中でもこの有人月探査の開発費は4倍以上も増えていて、とくにウェイトが大きくなっていることからその本気度がうかがえる。
コロナ禍の中で誕生した菅政権のもと、実は日本の宇宙計画は新たに動き始めていた。内閣に設置された宇宙開発戦略本部が5年ぶりに「宇宙基本計画」を改訂し、6月に閣議決定していたのだ。3次計画が策定された5年前から宇宙を巡る国際的な環境は飛躍的に変化しており、これへの対応を急ごうというものだ。
特に重要性を増しているのが軍事関係。アメリカは一般の衛星よりも低軌道に数百もの衛星を打ち上げて、低高度でも飛ぶ敵国のミサイルを探知・追跡するミサイル防衛構想「衛星コンステレーション」を進めているが、これにも日本は参加する予定で、防衛庁が関連予算1億7000万円を計上している。
このように、日米は宇宙開発でもその緊密度を深めているわけだが、有人月探査計画は10年以内の2020年代後半の実現を目指している。アポロ計画ではニール・アームストロングが月面に最初の1歩を記したが、日本人初のアームストロングには誰がなるのか。こちらは予算だけでなく夢も膨らむ話となっている。
(猫間滋)