避妊に失敗したり性暴力の被害に遭ったりと、望まない妊娠を防ぐために用いられるアフターピル。これは性的行為に及んでから72時間以内に服用すれば95%の確率で避妊できると言われる緊急避妊薬のことで、計画的に服用して排卵を抑える一般的なピル(低用量ピル)とは別物だ。
アフターピルは、欧米をはじめ世界90カ国以上で、処方箋なしでも薬局で購入できるが、日本では産婦人科や婦人科の処方が必要なため、簡単に手に入れることができないという。その理由について産婦人科医はこう解説する。
「日本ではアフターピルに対しての偏見がいまだ根強くあります。男性の中には、簡単にアフターピルを購入できてしまうと女性の性が乱れるという偏見が多いですし、女性の中にも副作用がひどいという誤った認識を持つ人も。このように使用者や薬剤師がアフターピルに対して十分なリテラシーを持っていないことや、性的犯罪・性虐待の証拠隠蔽に悪用されてしまうリスクを懸念する声もあります。また、病院にしてみればアフターピルが市販薬として認可されてしまうと、収入面でマイナスとなる可能性もあるため、あまり普及活動には熱心になれないようです。しかし、年々アフターピルの市販薬化の要望が高まっており、政府も対応せざるをえない状況となっています」
内閣府男女共同参画局の専門調査会が、アフターピルを処方箋なしでも薬局で販売できるように検討に入ったと報じられたのが10月8日。10月27日には、アフターピルの市販薬化を求める団体が、厚生労働省に10万7000人を超える署名と要望書を提出したばかりだ。
一連のニュースを受けてネット上では、《10代の子たちの緊急事態のためにも早く市販薬化するべき》《男は簡単にコンビニで避妊グッズを買えるのに、女性がピルを買えないのはおかしい》《簡単に避妊できる世の中になってしまったら、安易に“ナマ”を求めてくる男も増えるだろうし、性病が蔓延しそうだから市販薬化するべきでない》など賛否両論のようだ。
こうした議論が白熱する中、都内で複数のピンク店を経営するオーナーは、アフターピルの市販薬化を強く熱望している。
「もしアフターピルが市販薬化されれば、これに乗っからない手はない。うちはワケありの女を集めた会員制の“ナマ専門店”をやるつもりだ。お客には3カ月ごとに性病検査の報告書を提出してもらい、万が一、ピンク嬢が妊娠してもその“治療費”は店側が持つ。コロナで売り上げが落ち込んでいる中で、多少給料に色をつければ働きたがる女は多いだろうし、“ナマ”でできるとなれば男客も飛びつくはずだ」
また、普段から肉体関係有りのパパ活を行なっている女子(21歳)も、アフターピルの市販薬化には賛成のようだ。
「今まで客によっては1回3万円で肉体関係を持っていたけど、最近はコロナの影響でみんな段々会ってくれなくなってきた。でも、もしわたしが“ナマOK”と言ったらみんな戻ってきてくれると思う。やっぱりアレが好きな男の人って多いから。一応、ゴム有りは3万円で、ナマは10万円にしようかなと考えてる。“ナマ活”じゃないけど、カレシともたまにナマでしてるし、一度も妊娠したことないから多分大丈夫だと思う」
アフターピルの普及はピンク産業界と女性の貞操観に何をもたらすのだろうか。
(橋爪けいすけ)