人類史上初とも言える、耳慣れない“疾病”が地球上で大流行しているかもしれない。新型コロナウイルスの感染拡大で、マスクが手放せなくなってからはや半年。夏に入り、原因不明の肩こりや頭痛を訴え、病院に駆け込む患者が急増しているというのだ。
都内に住む会社員のA氏(40代)が体に異変を感じたのは6月下旬のこと。
「仕事柄、完全にリモートというわけにもいかず、週の半分は出勤で、出勤時は1日じゅうマスクが顔から離せないような状態でして……。そんなある日の夕方、突然激しい頭痛と肩こりに襲われたんです。それまで頭痛なんて経験したことがなかったから、驚きましたね。しかも、肩こりも吐き気がするほどひどくて……仕事を続けられる状態じゃなかったため、慌てて近所のクリニックを受診したんです」
しかし、医師の診断は、「軽い脱水では」というものだった。
「実はこれが『マスク肩こり』『マスク頭痛』の落とし穴なんです」と語るのが、医療ジャーナリストだ。
「一般的に頭痛には、血管が広がることで起こる片頭痛と、肩こりなどからくる筋緊張型頭痛があるのですが、夏前からこういった症状が急激に増えているんです。その理由として考えられるのがマスクで、通常、マスクは通気性があるので、二酸化炭素が含まれた呼気は、マスクの外に出ていきます。ところが、夏場にはマスク内の温度が40度以上になることもあって、通常より多くの二酸化炭素を含んだ空気を吸うことになります。二酸化炭素は血管を拡張させる科学的因子なので、これが片頭痛を引き起こす要因になるんです」
さらに問題なのが、マスクのゴムによる締め付けで、これが耳回りの筋肉(側頭筋)に負担をかけ、筋緊張型頭痛を呼び起こすというのだ。
「実はこの側頭筋は顎に関係していて、この部分に負担がかかると首の筋肉に影響が出る。それが肩こり、首の痛みとして現れるんです」(前出・ジャーナリスト)
しかも、厄介なのは片頭痛や肩こりを放置しておくと、それが自律神経に影響を及ぼし、やがて、うつ病を発症。最悪、死に至るケースもあると言われる。
では、「マスク肩こり」や「マスク頭痛」を予防するためにはどうすればいいのか?
「先にふれたように、マスクの長時間着用は緊張型頭痛を引き起こし、マスク内の暖かい空気を吸い込むことで片頭痛を悪化させる可能性がありますが、実は、着け続けるという心理的苦痛や顔の筋肉の凝り、歯ぎしりや食いしばりが誘発されるなど、さまざまな弊害を引き起こすんです。ですから、そうならないためにも、最低でもおよそ2時間に1度くらいは、両肩をすぼめて落としたり、首を前後左右に動かすなどのストレッチで首周辺をほぐすこと。また、冷たい飲み物を飲んで気分転換するのもいいでしょう。あとは、できるだけ笑って顔をほぐしてあげること。昔から笑う門には福来る、と言われますが、マスク頭痛やマスク肩こりにも、笑顔は効果的です。ぜひ試してみてください」
おそらく、世界中の人々が、これだけ長期間にわたってマスクを着け続けるのは、人類史上初のこと。やはり、人類を救うのは「笑い」なのかもしれない。
(灯倫太郎)