天才は忘れたころに…。2018年のドラフト1位・根尾昂がついに“覚醒”した。去る7月29日のオリックス二軍との一戦、3番・二塁でスタメン出場した根尾は第二打席で打った瞬間に「入った!」とわかる鋭い打球をライトスタンドに叩き込んだ。根尾の本塁打は約1年ぶり、それに気を良くしたのか、今度は左中間に流す“技アリ”の2号2ラン、8回の第5打席でも左翼フェンスに直撃するタイムリー二塁打を放ち、同日だけで「6打点」を稼いでみせた。
「翌日の同カードでもタイムリーを含む2安打。7月に入って、根尾の打撃は下降ぎみだったので、まさに覚醒です」(名古屋在住記者)
2本塁打6打点を稼いだ時点での通算打率は2割5分。覚醒には前兆は見られなかったようだ。仁村徹二軍監督らは根尾の活躍を喜んでいたが、こんな声も聞かれた。
「後輩で高卒1年目のルーキー、石川昂弥が先に一軍昇格となり、悔しい思いをし、それが発奮材料になったのではないか」(前出・名古屋在住記者)
覚醒は突然ではあったが、根尾はプロの壁にぶちあたって以来、懸命にバットを振り続けてきた。地道な努力が実ったのだろう。
「根尾はクレバーな選手です。やみくもに素振りの回数を重ねていたのではなく、左方向に強い打球を飛ばすため、マシン打撃のときも、レフト方向を意識するスイングをするなど工夫をしていました」(球界関係者)
あえて覚醒の前兆を挙げるとすれば、下降ぎみだった7月の打撃成績があてはまる。大阪桐蔭時代の根尾は「強打」でも知られていた。プロ入り後、その自慢の打撃が振るわなくなった理由は、タイミングの取り方にあった。プロの投手が投げるボールは高校生とは比較にならない。根尾はコンパクトにスイングしようとするあまり、自分の打撃スタイルを見失ってしまった。
「二軍首脳陣は根尾の打撃成績が落ちると、新しいタイミングの取り方を試していると解釈していました。7月の成績下降は試行錯誤によるものだったのでしょう」(前出・球界関係者)
昨秋から外野守備にも挑戦していたが、二軍戦では主に二塁手として試合に出続けている。一軍の二塁手・阿部寿樹も今季は打撃がふるわない。
「好調さが持続するようなら、一軍昇格は必至。あと2、3試合見たら、一軍昇格という流れが予想されています」(前出・名古屋在住記者)
根尾が低迷するチームの救世主となるかもしれない。
(スポーツライター・飯山満)