プロ野球、伝統の一戦・巨人対阪神戦を振り返る上で欠かせないのが、1999年6月12日に甲子園で行われた阪神・巨人戦の「敬遠球サヨナラ打」だろう。
4対4で迎えた延長12回裏、1死一、三塁の場面でマウンド上の槙原寛己と捕手の光山英和は、打者・新庄剛志に対し敬遠策を選択。しかし、1ボールからの2球目、外角高めのボール球に新庄が食らいつくと、打球は転々と三遊間を抜け、サヨナラ打となる。
この殊勲打は、翌日のスポーツ紙にも大きく掲載され、同時に「新庄がバッターボックスからはみ出して、ホームベースを踏んで打ったのでは?」という論争にも発展した。
この後日談として、2017年にテレビ番組「炎の体育会TV」(TBS系)で、当事者の新庄剛志氏と槙原寛己氏が対談。槇原氏が「この話を(新庄と)するのは初めて」と語ると、新庄氏は「絶対に怒ってると思っていた」と話し、ホームベースについては「確かに踏みました。だけど審判は見ていないと思っていた」と白状。槇原氏も「打たれたほうが悪い」と、18年後にしてわだかまりの決着を見つけた形になった。
時は2018年8月8日。東京ドームで行われた巨人・阪神戦のテレビ中継に、巨人OBの原辰徳氏、松井秀喜氏、阪神OBの赤星憲広氏が出演していた。「伝統の一戦」をテーマに、ゲームの合間に“名シーン”が振り返られる中で、この「敬遠サヨナラ打」が扱われると、当時、長嶋茂雄監督の下でヘッドコーチを務めていた原氏は「このとき、長嶋監督にめちゃくちゃ怒られましてね。私も、バッテリーを呼びつけて、こんこんと説教しましたねぇ」と回想。「1球目が(外し方が)甘かったでしょ?だから打てると思われたんじゃないかなぁ」と振り返り、「でも、(阪神監督の)野村さんも笑ってるけど、もしアウトになっていたらめちゃくちゃ怒ってただろうね」と話した。
まるで会社組織を見るかのような、上流から下流に流れる“説教の川流れ”。それは伝統の巨人軍でも同じだったようだ。