プロ2年目、2018年ドラフト1位の大田椋がプロ初打席で初アーチの快挙を成し遂げたのは7月16日のことだった。太田の父・暁さんは元近鉄投手で、現在はオリックスバファローズの打撃投手を務めている。
「父が投げたボールを息子が打って、試合に」という親子鷹の様子はファンの関心を引きそうだが、西村徳文監督は「これで混乱が治まってくれれば…」と思っているのではないだろうか。
というのも、太田の一軍デビューは“大看板の倒壊”が関係していたからだ。
「アダム・ジョーンズの守備のミスが続いて…。打撃力に期待して獲得しましたが、たしか守備のタイトルも獲得したはずです」(在阪記者)
ジョーンズはメジャー通算282本塁打、守っても4度のゴールドグラブ賞に輝いている。彼にカウントされた失策数は「1」だが(同時点)、埼玉西武戦では(3日)、凡フライを後逸し、二塁走者を生還させている。こんな指摘も聞かれた。
「6月13日の練習試合(対阪神)でも、凡フライを落球しています。守備で走るのも遅いし、返球も山なり。もしかしたら、故障しているのではないか?」(プロ野球関係者)
打つほうでは存在感を見せつけているが、ライトを守っていたジョーンズを指名打者にまわし、そこから、守備陣の大シャッフルが始まったのだ。T−岡田が一塁から外野へ、指名打者だったロドリゲスが一塁にまわった。外野手登録の宗佑磨が三塁を守った試合もあった。その急造守備陣が味方投手の足を引っ張っていた時、走攻守に優れた太田がスタメン三塁のチャンスを掴んだというわけだ。
そのチャンスをものにできたのは太田父子の努力の結果でもある。
「ジョーンズにはチームリーダーとしての役割も期待していました。2月キャンプ中は同じ外野手たちと食事に行き、守備に関するアドバイスも送っていました。他の野手が彼の打撃練習を見入っていると声をかけたりして…」(前出・在阪記者)
今の守備力では低迷するチームに檄を飛ばしても、響かないだろう。太田のハツラツぶりがなければ、オリックスは早々にペナントレースを投げだしていたかもしれない。
(スポーツライター・飯山満)