大阪を代表する名物の串カツ。その文化が今、大きく変わろうとしている。串カツと言えば「ステンレス容器に入ったたっぷりのウスターソースに揚げたてのカツをソースに潜らせどっぷりと浸してから食べる」「ソースは客同士で共有する」というのが定番だった。しかし、人気チェーン店の「串カツ田中」は新型コロナウイルス感染予防徹底のため、この従来のソースの提供方法を中止することを決定。「串カツ田中」は以前から、グループごとに新しいつけソースを提供して衛生管理に努めていたが、6月12日よりコロナ対策として、ディスペンサーに入ったソースを串カツに“かける”方式に変えた。
長年の風習を取りやめ、新しい様式へ転換をしたのは「串カツ田中」だけではない。古くから営業を続ける街の串カツ屋でも、コロナウイルスを考慮してつける式からかける式への変更が相次いでいる。
このつけるソース廃止の流れにネット上ではコロナ予防以外の観点からもこの変化を喜ぶ人が多く現れた。《つける式は前から不潔に思えて苦手だったからかける式になって嬉しい!》《二度付けしちゃってる人を目撃してから一度もあのソース使えなかった、これからは安心できる》とつけるソースに嫌悪感があるという人が多くいることが明らかになったのだ。
「近年、串カツの共用ソースに抵抗を示す人が急増し始めました。その原因として挙げられるのがSNSのイタズラ投稿です。数年前、客席にある調味料の注ぎ口を舐めたり鼻に刺したりといったイタズラの写真をTwitterなどのSNSに投稿する若者が多発し『バカッター騒動』と社会問題になりました。この騒動以来『他の客のモラルが信用できなくなった』と店の卓上調味料に不信感を持つ人が急増したのです。中でも串カツのソースは『2度漬け禁止』という、特に客のモラルに依存したルールのもとで衛生が守られています。そのため、一部の人の外食へのモラルの低さが露呈するようになった今、特に串カツのソースに不安を覚える人が多いようです」(グルメライター)
昔から仲間内でのそのようなイタズラはあったが、SNSの普及により一部の人のモラルの低さが可視化され拡散されるようになり、言わば「知らぬが仏だった」ものが人々の目につくようになり、安全神話が崩壊することとなった。店側も神経を使わなければならなくなり、調味料を小袋にわけて提供するなどの対応を取る店も増えてきている。
「実は昨今のそのような状況を受けてコロナ以前からつけるソースを廃止していた串カツ屋もありました。今回のコロナ禍を機に多くの店が『かけるソース』に変えていますが、ほとんどの店はコロナ終息後も『つけるソース』に戻すことはしないのではないでしょうか」(前出・グルメライター)
他方で「ソースに潜らせて食べるのが正しい串カツの楽しみ方」と言う声も依然として少なくない。一部のモラルのない人のせいで食文化の伝統が消えていくのは残念でならない。
(浜野ふみ)