「脱・石炭火力発電」を打ち出したみずほFGと「環境NPO法人」の関係

 4月15日に「脱・石炭火力発電」を発表したのはみずほフィナンシャルグループだ(以下、みずほFG)。「金融機関がなぜ?」との疑問がわくが、要は、石炭火力発電向けの新規融資を原則停止し、与信残高を2050年までにゼロに。これを機にサステナビリティ(自然と共生する持続可能な社会システム)への取り組みをグループあげて強化するのだという。

 CO2排出削減で地球環境を顧慮した取り組みは単純に評価に値するが、みずほFGがこういった目標設定を行うには、実はそうせざるを得ない事情があった。

 みずほFGの株主総会は6月開催を予定しているが、これに向けた3月、ある珍しい株主提案がなされた。提案を行ったのは環境NPO法人の「気候ネットワーク」。その中身は、

「気候変動に関する経営戦略を開示せよ」というもの。みずほFGは2019年5月に石炭火力発電事業に対する融資を見直す方針を示していたが、実際には抜け穴だらけというのだ。だから、方針通りに融資実態を改めよというのだ。

 そして4月に入り、この提案に賛同する生命保険や年金基金を運用する機関投資家の複数株主が現れたと報じられた。そういった事情もあってか、冒頭のような「新規融資ゼロ」の方針が示されたのだ。

「“緑のモノ言う株主”とでもいう存在の提案が会社を動かしたことになりますね。同法人は昨年8月からみずほFGの3万1000株を保有しています。みずほFGの発表を受けて同法人は『一定の評価はするが、まだまだ』とのコメントを出しています。なにしろ同法人はみずほFGを石炭発電所デベロッパーへの世界最大の貸し手と見ていますから、今後、どんな突き上げが行われるやら」(経済ジャーナリスト)

 先ごろ行われた気候変動を話し合う国際会議(COP25)では小泉進次郎・環境大臣が日本の出遅れについてさんざん突き上げられたばかり。今や裁判にまで持ち込まれる「気候変動訴訟」は世界的に増加の一途。気候ネットワークはみずほFG以外の企業への訴えかけも積極的に行っているので、他の企業もうかうかできない。

 そのみずほFGに関して、『みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史』という本がしばらく前から売れ続けて話題になっている。2月14日の発売日は書籍総合トップの売れ行きで、発売後5日間で5万部を超えるほど。今でも書店では平積みで売れ続けている。

「日経コンピュータがまとめたもので、本来はシステム系のマニアックな本ですが、売れましたね。実は同書は02年、14年の前著と併せた3部作の締めとなる総集編といった中身になっています。タイトルに『苦闘』とあるように、つまりはそれだけ反省すべき点があったという見方もできます」(前出・経済ジャーナリスト)

 フィンテックが進み、AI(人工知能)を活用した融資サービスが始まるなど、業態の再考が求められている銀行業界。3大メガバンクの中でもリストラを含めた再編で遅れをとっていると指摘する一部メディアもあるが……。さて、6月の総会はどうなるか。

(猫間滋)

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