この12月で、1996年に広島の原爆ドームと並んで世界遺産に登録されてから32年を迎える厳島神社のある広島・宮島で、島に入る際にかかる税金の「入島税」の導入が検討されている。
「10月に行われた地元・廿日市市の市長選で、入島税の導入を公約に掲げた松本太郎氏が当選したからです。同氏は当選後の記者会見でも、観光地としての維持整備の観点から新たな財源確保の必要性を強調、2021年の導入を目指すとしていました」(全国紙記者)
こういった話が出て来るのもやはりご多分に漏れず、少子高齢化による地方の衰退で人口が減っているから。島の人口はこの10年間で約1000が減った。2015年の国勢調査での島の人口が1674人なので、いかに急激に人口が減っているかが分かる。
一方、長いこと200万人台で推移していた来島者数は、ここ約5年は400万人台で推移している。広島からフェリーに乗れば簡単に訪れることができるので外国人観光客にも人気が高いが、島そのものが世界遺産なので、税収が減る中で神社周辺の森林など環境・観光整備にいかに金がかかるかは容易に推察できる。
徴取方法だが、金額は100円程度で、島へ渡るフェリーの乗客あるいは運航業者に課税したり、観光施設の利用者から直接集めるなどの案が検討されている。
「ですが、実は入島税が検討されるのは今回が初めてではないんですよ」
として、前出・全国紙記者が続ける。
「2008年にもやはり今回と同じ理由で入島税の導入が検討されました。しかし、島は観光地であり、周辺住民にとっては当然ながら生活の場でもあって、フェリーや島への運航は生活の足でもあるので利害調整が難しく、税負担の公平性の問題もあって導入を見送った経緯があるんです」
この入島税のような料金徴収は広く入域料と呼ばれる。国立公園や国定公園、景勝地などの自然保護目的で、受益者・利用者負担の原則に基づいて、2014年に成立した自然資産区域法で法的根拠が与えられた。ほかには、入山料、入園料、保全協力金、環境保護税、清掃協力金などの名目で導入されている。静岡県・山梨県の富士山の入山料(1000円・保全協力金)のほか、北海道の知床5湖(250円)、鹿児島県の屋久島(500円)などが有名で、海外でも、タンザニアのキリマンジャロ国立公園やペルーのマチュピチュでも導入されている。
同じ島で言えば、沖縄県の竹富島では今年9月から観光客を対象とした、強制でない協力金の入島料(300円)が導入されたばかりだ。
さて、結論はどうなる。
(猫間滋)