これは、単なる愚痴ではなさそうだ。
阪神・藤川球児が契約更改に臨み、6000万円増の推定2億円を勝ち取った。今季はセットアッパーでスタートしたが、クローザーの地位を奪い返し、56試合に登板し、4勝1敗16セーブ、防御率1.77の好成績を残した。
しかし大幅増で口が緩んだのか、その後の会見で「一番乗りで補強したチームが勝ちましたからね。パ・リーグもどんどん補強し始めている」と、育成だけでは優勝できないという持論をブチまけたのだ。
「契約更改の席上で球団幹部に補強の必要性を訴えたそうです。その内容を打ち明けたんです」(在阪記者)
契約更改の席で練習施設面の改善など、球団への不満をぶつける例は、実は少なくないそうだ。とはいえ、それは交渉中の密室の中で行われるもので、わざわざ会見で蒸し返す必要はない。藤川も大人の対応ができる選手だが、今回はあえて公言したわけだ。
それを聞いて、ピンと来た取材陣、関係者も少なくなかった。
「補強で勝ったチームとは巨人のこと。単なるライバル批判ではありません。選手補強はフロントの仕事であって、監督や一部のコーチと話し合って決められます。藤川があえてそれを口に出したということは、球団が『将来』のことを藤川と相談したのでしょう」(球界関係者)
他球団のケースだが、こんな話もある。広島前監督の緒方孝市氏は、現役時代から投手陣の強化や、獲得する外国人選手のタイプを契約更改の席で提案していたという。近い将来、指導者となって引退後もユニフォームを着る“保証”を得ていたからだ。球団側も補強ポイントを語らせることで、「チーム全体を見渡す目」を養わせていたそうだ。
となれば、藤川も今回の契約更改中に、引退後の阪神指導者の打診をされたと見るべきだろう。
「メジャーリーグに移籍し、国内独立リーグで再起を目指していた時期もありましたが、阪神の看板選手であり、後輩に強い影響力を持っていますからね」(同前)
阪神は近い将来、鳥谷敬が監督になると思われていた。その鳥谷が現役に強く執着し、退団してしまった。今回の補強必要論は、未来の阪神を指揮するという藤川自身の決意表明だったのだろうか。
(スポーツライター・飯山満)