文房具メーカーの再編を巡る会社争奪戦が熱くなっている。
11月15日に2018年の売上高で業界2位のコクヨ(3076億円)が19位のぺんてる(240億円)に対する株式の公開買い付けを発表。いわゆる敵対的TOBで、一気に業界の緊張が高まった。
というのも、両社は5月に業務提携に向けた協議を開始したのだが、ぺんてる側が国内事業の提携には消極的で協議は上手く進んでいなかったからだ。コクヨは5月の段階でぺんてるの337万株を3000円の約100億円で相対で購入、37.45%を保有して持分法適用関連会社としていたのだが、ここにきて今度は3500円で公開買い付けして、過半数を保有、連結子会社化するというのだ。
「コクヨが攻勢をかけた理由は、『ぺんてるが第三者と資本提携を画策しているため』というものでしたが、その第三者は業界6位のプラス(1348億円)と判明します。いわゆるホワイトナイト(白馬の騎士)を立てたわけですが、さらにはキングジムやニチバンといった企業もぺんてる・プラス陣営に加わろうとしてさらに関係は複雑にこじれています」(経済ジャーナリスト)
さらに21日になり、コクヨは公開買い付け価格を3750円に引き上げた。プラスが設立した会社が3500円で買い付けようとしているのが判明したため、より有利な価格を提示する必要が生じたからだ。
なぜそうまでしてコクヨはぺんてるを傘下に置きたいのか。
「ぺんてるはいち早く海外展開に進出し、しっかりとしたブランドが確立されているからです。国内は人口減で成長性は乏しい。これは文房具業界でもまったく同じ。ぺんてるの海外売上比率が65%超で業界では断トツなのに対し、コクヨはわずか7%。ぺんてるでは2012年に創業社長の解任劇があって、株主対策にスキがあった。ぺんてるが非上場企業でありながら、今回、買収の対象となってしまった背景にはそういった事情があるんです」(同前)
事態がどう転ぶかで業界全体の勢力地図も大きく様変わりするかもしれず、依然、注目が集まっている。
(猫間滋)