7月14日朝、神奈川県西部を中心に通勤・通学客に大きな混乱が広がった。原因は、相鉄線の二俣川~鶴ヶ峰駅間での線路内立ち入り。この影響で、相鉄本線・いずみ野線の二俣川以西の全区間が運転を見合わせ、さらに乗り入れのあるJR線や東急線方面にも影響が波及した。
この事態を受け、SNSでは一時「二俣川が止まると相鉄全体が止まる」という声が広がり、利用者の間では相鉄ネットワークの構造的な弱点が改めて注目された。
では、なぜ二俣川がそれほどの「急所」なのか。二俣川駅は、相鉄本線といずみ野線の分岐点であると同時に、JR線(新宿方面)・東急線(渋谷・目黒方面)への直通列車が集中する拠点。特に朝の通勤通学時間帯には、直通列車の通過や折り返しが設定されており、ここでの運転支障は広域な混乱を招く。また、相鉄線は放射状の線形をしており、代替ルートも存在しないため、復旧作業にも時間を要する。
実際、今回の影響で、相鉄本線の海老名~二俣川間、いずみ野線の湘南台~二俣川間が完全に運休。さらに、二俣川~横浜間でも大幅な間引き運転が発生した。これにより、希望ヶ丘・三ツ境・弥生台などの各駅では改札制限や振替輸送を待つ長蛇の列が発生。相鉄線は一時的に“機能不全”とも言える状況に陥った。
ただし、こうした状況が今後も続くとは限らない。現在、相鉄本線の西谷~鶴ヶ峰間(約2.1km)を地下化する連続立体交差事業が進行中だ。これは、鉄道を地下化し、沿線に存在する10カ所の踏切を除却し、交通の円滑化と鉄道安定運行を図るもの。踏切のうち9カ所は「開かずの踏切」で、ピーク時には1時間のうちに40分以上遮断されるところもある。地域住民の利便性や救急・防災、都市整備の観点からも極めて重要なプロジェクトである。
ただし、完成予定は2033年度であり、それまでは現行構造のままで、今回と同様の事態が再び発生するリスクを抱えることになる。
今回の運転見合わせは、単なる突発的トラブルではなく、相鉄線という鉄道ネットワークが抱える構造的な弱点を浮き彫りにした。拠点駅が一カ所でも止まると広域に影響が波及するという実情は、鉄道事業者にとっても利用者にとっても看過できない問題だ。
インフラの整備が完了するその日まで、利用者自身も「もしも」に備えた想定行動や情報収集の重要性が高まっている。
(ケン高田)