個別住所の「郵便番号」が発行されるけど…日本郵便「デジタルアドレス」の利便性と課題

「デジタルアドレス」の登録をした人はいるだろうか。これは日本郵便が5月26日に開始したもので、住所を「7桁の英数字コード」で表す新サービス。従来の郵便番号(3桁+4桁)とは異なり、デジタルアドレスは「ABC-1234」のように、丁目や番地、ビル名、部屋番号まで含めた個別住所を一意に識別可能な点が最大の特徴だ。

 まず、郵便番号との違いを整理しよう。郵便番号は市区町村や町域までを示すコードで、その先の丁目以下は住所の記載が必要となる。一方でデジタルアドレスは、郵便局アプリ「ゆうID」に登録した自宅住所(マンション名や部屋番号を含む)を丸ごと1コードに変換する。さらに、引っ越し先に住所を変更しても、デジタルアドレス自体は変わらず、同じコードが使える「住所ポータビリティ」機能を持つ点も大きな利便性と言える。日本郵便では今後10年間で「数千万コード」の発行を見込んでおり、ECサイトや物流企業への浸透を図る計画だ。

 登録手順はシンプルで、まず、ゆうIDに会員登録し、自身の住所を入力してデジタルアドレスを取得すれば完了する。基本利用料は無料で、マイページからいつでも住所変更や削除が可能。

 デジタルアドレスを取得するメリットは多岐にわたる。入力欄に、例えば「ABC-1234」と記載するだけで、建物名や部屋番号の手入力を不要にし、ECサイトのコンバージョン率向上や、誤配送の削減が期待できる。また、企業向けには「郵便番号・デジタルアドレス for Biz API」が無償提供されており、既存の郵便番号入力欄を英数字対応に変更するだけで導入可能だ。

 一方で懸念事項もある。当然ながらセキュリティリスクには注意が必要だ。第三者による総当たり攻撃(ブルートフォースアタック)や、コードの漏洩によって個人の住所情報が特定されかねない脆弱性が指摘されている。また、コード自体に意味がないランダム英数字であるため、「人が見て直感的に理解しにくい」という点や、ゆうIDへの依存度が高まることによるサービス停止時の影響も指摘されている。さらに、デジタルアドレスの記載のみで郵便物・荷物を送ることはできないため、デジタルアドレスと現住所の二重管理が必要になる。企業、個人ともに運用ルールの整備が求められるだろう。

 今後は、楽天などの国内大手ECプラットフォームや物流業界を中心に、普及の動向が注目される。住所入力の手間を劇的に省く一方で、セキュリティ対策や利用者向けの周知徹底がサービス成功のカギとなりそうだ。

(ケン高田)

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