実際に闇バイトに加担した経験を持つ、若者たちの声を聞いてみた。昨年、逮捕され、執行猶予がついた大学生のAが話す。
「真面目にコツコツなんてやってられないし、見つけたメジャー求人サイトに応募した。そしたら、シロアリ駆除の闇バイト。適当に年寄りの家に営業をかけ、シロアリをばら撒いて、動画を見せる。で、何もしないで、工事したフリだけで金が貰えた。もしバレなかったら、まだやってたでしょう」
フリーターのBは、何も知らないうちに極道の片棒を担いでいたという。
「高額なおしぼりと観葉植物のレンタルの配送をしていただけです。まさかショバ代までが上乗せされているとは思わずに、一生懸命運んでいました。出前の仕事も頼まれたら、覚醒剤を運ばされていてそのまま逮捕され、懲役2年‥‥。ただし、自分でも何となくおかしいとは気づいていたんですが、知らないフリをしていた」
被害者から直接に訴えを聞くことも少ないため、罪悪感が薄く、安易に犯罪の協力者となり続けてしまうようだ。
より悪質なのは次のケース。金銭を搾取される被害者が確実に存在するのに、老齢者を騙しても「何の感情も抱かない」と言ってのける18 歳の学生Cが証言する。
「ババアの家に上がり込んで羽毛布団を敷き、添い寝。40万円でそのまま購入させるんだ。インチキ浄水器を勝手に取りつけて『おいしい』と言わせて、『取り外すには15万かかる』と、現金55万円で買わせる。それがそんなに悪いことなのかわからない。値段を決めるのはこっちだし、買うのは年寄り側の問題だろ」
これが「楽して効率的に稼ぐのが賢い」という価値観なのか‥‥。ドジを踏んで捕まったのは運が悪かったからという短絡的な思考が顔をのぞかせる。
一方、正規の求人サイトを介して応募したら闇バイトだった、という者が82名もいた。彼らは騙されて加害者にさせられており、ある意味では同情に値するが、悪事がバレれば悲惨な末路が待っていることに変わりはない。
先の藤原氏が語る。
「先ほど、罪を償って更生してほしいと言いましたが、昨今の社会は寛容さがありません。一度でも闇バイトに巻き込まれると、厳罰化傾向が強く『ワンストライク・バッター・アウト』で退場になってしまう。預貯金口座が持てなくなり、各種契約もできない可能性が高まるのです。その元凶は『デジタルタトゥー』ではないかと考え、法務委員会で質問しました」
フリーライター・丸野裕行
(つづく)