猫が罹患する「猫エイズ」は、愛猫家を悩ます重病の1つだ。食欲不振や嘔吐が数日間続き、動物病院を受診してFIV(猫免疫不全ウイルス)の陽性、つまり、猫エイズと診断されるケースが多い。しかも、最近になってこの病気が急増しているという。
「一部ペット保険会社による2010年の調査によれば、国内で外飼いされている2割以上が陽性だったというデータがあります。実は、この数字は海外、特に北米と比べると10倍以上もの罹患率なんです。いかに日本国内において、『猫エイズ』がまん延しているかがうかがい知れます」(ペット情報サイトのライター)
猫エイズは、ウイルスの長期感染により正常な免疫細胞が徐々に減少する。結果、免疫機能が著しく低下してさまざまな病気にかかりやすくなり、最終的に死に至るというものだ。
「外猫にFIVが広がっている最大要因は、猫同士による直接的接触です。ウィルスを保菌している猫が別の猫と交尾した場合、感染リスクが高い。また、猫同士のけんかによる噛み傷から感染する場合もある。さらに、子猫が母親から感染するケースもあります」(前出・ライター)
ただ、完全な室内飼いの場合は、愛猫が見知らぬ猫と接触することはなく、感染力がさほど強くないFIVに感染することは、ほぼないと言われる。
一方、室内と外とを行き来している猫の場合は、野良猫やそのほかの猫と接触する機会が多いため、感染リスクも格段に高くなってしまう。
「FIVの予防策としては、まずワクチンの接種があげられます。また、可能であれば完全室内飼いに切り替え、愛猫が見知らぬ猫と接触しないような環境を整えてやることです。FIVは、一度感染すると体内から排除することができません。また、免疫不全により消化器や皮膚のほか、歯肉炎や風邪などの症状が頻繁に表れる。結果、抗生物質などの抗菌薬を投与することになり、そのたびに5000~1万円程度の治療費がかかる。近年では人間のHIV感染に対する治療法が確立されたこともあり、FIVへの治療方法が将来的には確立できるのでは、と見られていますが、今はまだ難しい状況です」(前出・ライター)
ワクチン接種や生活環境の見直しなど、事前の予防こそが最大の防御となるようだ。
(灯倫太郎)