「自民党は挙党態勢を組んだ方がいい。日米貿易協定(2020年発効)で極めて厳しい交渉をやった『タフ・ネゴシエーター』は茂木(敏充)さんじゃないか」
トランプ米大統領による関税政策により、永田町界隈では自民党の茂木前幹事長に注目が集まっている。石破総理がトランプ関税を「国難」として野党の協力を求めるなか、立憲民主党・野田佳彦代表が冒頭のように茂木氏を名指したことも影響している。
経済部記者が明かす。
「茂木氏は19年、第1次トランプ政権時に安倍政権の経済再生担当相として日米貿易交渉を任されています。当時の交渉相手はアメリカのカウンターパートナー、剛腕で知られる通商代表部代表のライトハイザー氏で、自動車関税を25%に引き上げる通商拡大法232条をちらつかせ、アメリカに有利な協定を結ぼうと強気だった。しかし、これに対し茂木氏は『やってみろ!交渉の経緯を日本中ばかりか全世界に全て公にする』とばかりに啖呵を切って一歩も引かなかった。結果的にトランプ&ライトハイザーが折れ、日本はアメリカが求めた牛肉・豚肉の関税引き下げなどは飲んだものの、自動車関税25%をギリギリで回避することができたんです」
そんなこともあって当時のトランプ氏は、「茂木はタフ・ネゴシエーターだ」と褒めちぎったほどなのだ。
「だから今回も、茂木氏をアメリカとの関税交渉の全権責任者にあて突破口を開くべきとの声が、野党のみならず自動車業界をはじめ財界からも高まっているわけです」(同)
しかし、茂木氏といえば昨年の総裁選では石破総理と激しく争った間柄で、決して関係が良好というわけではないようだ。自民党関係者は言う。
「2人の相性自体が今ひとつなのは本当かもしれませんが、石破総理としてはトランプ事情に精通する茂木氏に頼むのも選択の一つ。ただ、仮に茂木氏が引き受けたとしても、どこまで本気でやるか、また前回同様、どこまでトランプ氏に響くかも未知数。何せ当時は茂木氏というより、バックに安倍晋三という大看板がありましたから」
いずれにせよ、ここ1~2カ月の間に石破政権がどう対処するかで、日本経済の将来が大きく左右されることは間違いない。
(田村建光)