続いて、積極的にはオススメできないとしつつも、一風変わった好みの食べ方の1つを披露してくれた。
「『窒食』という食べ方があります。これは超エクストリームな提示で、まさに外道の食べ方と言えます。『窒息』と『摂食』を混ぜた僕の造語で、喉に食物を詰まらせながら食べること。僕はこれが大好きなんです。とはいえ、誤嚥の問題がつきまとうので、やるかやらないかは自己責任です」
その原体験は、母親の握った硬いおにぎり。しっかり噛まずに貪った結果、喉につっかえた個体を麦茶で流し込んだ。その時の得も言われぬ高揚感が今でも忘れられないというのだ。
「水分を流し込んだ時に、その的を射抜いた感じ、あの感覚が何とも言えない。味はまた別で、喉ごしと言いますか、通過感というか。人間ってただの筒なんだなと感じちゃいました。口の入り口でおいしかったものを、喉元までさらに引っ張れるのかっていう楽しみ方があるわけですよ」
新幹線に乗る際は、「マジックパール」という白い網に入ったゆで卵を買い、熱いコーヒーで流し込むのが習慣。さらには、カステラと牛乳。この組み合わせは、窒食の教科書1ページ目だそうだ。
「冷めた肉まんもオススメ。がっつりパコッて喉にハマッてくれます。ベストバウトとしては、冷めたポテトとコーラの組み合わせにも触れないわけにはいきませんね。ポテトを鷲づかみして、口の中に目いっぱい放り込んで、コーラでギュッと押し込むと、炭酸のシュワシュワと一体化する喉元。ただし実行するには誰に見られてもかまわないと、羞恥心を取り払う必要がありますね(笑)」
ところで、食を楽しむためにマキタが大切にしている根幹に「そこに至るストーリー」がある。
例えば愛用するフライパン1つ取っても、並々ならぬこだわりを感じさせる。
「長年、鉄のフライパンを育てています。義理の親父が板前で、そこで使っていたものを引き継いで、少なくとも僕の手に渡ってきてから20年以上は経っています。科学的な根拠はないですけど、鉄パンをちゃんと育てると、残滓として味が引き継がれていくようなイメージがあって、僕の中で大事にしている感覚です。テフロンだと1回1回リセットできるので、育てる必要もなく、誰でもある程度のクオリティーの料理がちゃんとできる。しかし、鉄パンは育てないといけない。管理の仕方があって、やたらと洗剤つけて洗ってはいけない。そんな儀式を経て、餃子を焼き、チャーハンを炒めたら、『育ってきてるな』『引き継いできてるな』って感じがたまりませんね」
グルメ道には、奥深きストーリーがあるのである。
マキタスポーツ:1970年、山梨県生まれ。芸人、ミュージシャン、俳優、文筆家など、多彩かつ旺盛に活動中。映画「苦役列車」で第55回ブルーリボン賞新人賞などを受賞。先頃、「グルメ外道」を上梓した。