昨年末には「新米が流通すれば安くなる」という情報が拡散したものの、一向に収まらないコメ価格の高止まり。ついにコメに見切りをつけて、パン食に切り替えた人も急増したといわれる。
ところが、ここにきて江藤拓農相が、「これ以上高くなると、コメ自体を消費者が選択しなくなる」と危機感を表明。「政府備蓄米」の放出を早期に実施することを明らかにした。
100万トンともいわれる備蓄米の一部が市場に出回れば、コメ価格は下がるはずで、消費者にとっては朗報といえる。ただ、同時に「1年以内に同量を買い戻すこと」という条件が付されていることから、後になってまたコメの供給量が減ることが予想されてもいるのだ。これでは近い将来、再びコメの価格が上がる可能性も否定できない。
なぜ、農水省はこのような条件を付けたのか。背景にはJAや生産者、農水省の「思惑」があるという。
「実は、一部生産者やJA関係者などから、備蓄米の放出を良しとしない声が噴出しているのです。そもそも今回の放出は、支持率下落が続く石破政権が、国民ウケを狙って農水省に指示したと見られています。そして、今でも農水省は『いずれコメ価格は落ち着く』という立場を変えていません。JA、農水省、いずれも場当たり的な備蓄米の放出には反対なのです」(流通ジャーナリスト)
1月27日には、JA県五連の宮田幸一会長も、「もし足りないのであれば、生産調整をしている面積を増やし、需給バランスを合わせてほしい」と訴え、備蓄米の放出に反対の姿勢を表明している。宮田会長はまた、コメの価格について、「この春の作付けが去年より増えれば、多少下がる」と語った。
果たして高騰にあえぐ多くの消費者の思いは、JAや生産者、農水省に届いているのか…。
(ケン高田)