「余った処方薬」に潜む危険

 不思議なことに、年末年始で病院が休診になると決まって体調を崩す人がいる。これは休みに入り仕事から解放されたことで、隠れていた病気が表に現れるからではないかとされている。近年は年末年始も営業しているコンビニやドラッグストアが増えたことで市販薬の購入は可能になったが、なかには「同じ症状だから」と、以前医師から処方された薬の余りを服用するケースも多い。しかし、実はこれ、大変危険な行為だということをご存じだろうか。

 使用期限が3年、5年と外箱などに記されている市販薬と違い、処方せんをもとに薬局で調剤された処方薬は錠剤やカプセルなどのシートでもらうことが多く、消費期限が記されていない。なので、種類によっては処方後、数日内で使い切らなければいけない薬もあるため、いくら同じ症状だとしても処方された薬は使うべきではないのだ。

 通常、処方薬の保管期間の目安は、錠剤やカプセル剤でだいたい6カ月~1年。散剤・顆粒剤(薬局での分包品)の場合3カ月とされ、点眼薬(開封済)の場合は1カ月となっているが、とはいえ、これはきちんとした方法で保管されている場合の話。薬によっては温度や湿度、光により有効成分が減ってしまったり、それどころか症状をさらに悪化させ、思わぬ副作用を引き起こす場合もあるため、注意が必要だ。

 一般的に薬の保管温度は室温保存の場合、30℃以下。冷所保存の場合は15℃以下、もちろん凍結する場所は避けるべきだ。また、薬によっては冷蔵庫に入れて管理するもの(坐剤やシロップ剤、点眼剤など)や、日光だけでなく、自宅の照明器具の光を受けただけで変性する種類の薬、さらにまれにではあるが、毒性を帯びて有害な物質に変質していく薬もあるので、知らずに服用したら大変危険なことになる。

 特に抗生剤の中には時間が経ち変性したまま服用すると重大な腎障害を引き起こすことがあり、胃腸薬にも変質しやすい生薬や消化酵素が多く含まれているため、使用期限や保管場所には十分な注意が必要。また目薬も開封して4週間以上経つと空気中の雑菌が混入して腐敗し、感染を引き起こす危険が増す。そのため調剤薬局で出された使用日数を大きくこえている場合は「またいつか使えるかもしれない」などと考えず、期間が過ぎたら迷わず処分することをおすすめしたい。

 処方された医療用医薬品というのは、ドラッグストアで売られている市販薬と違い、あくまでも医師が診察時の患者の体調や症状などに合わせ、最適に処方したものだ。なので、よく飲み忘れて余ってしまった薬を「これ飲んでみれば」と家族や友人に勧める人もいるが、自己判断で薬を手渡すようなことは絶対にやってはいけない。

 また、小さな子供がいる場合は、子供の手の届かない所に置くことも大切。薬というのは患者に処方・調剤されるまで、製薬会社が品質と安全性の確認試験を何度も行い使用期限を設定。しかし、季節によって「温度・湿度・光」の3条件が変わっていくため、使用期限そのものを見直すこともままあるのだとか。そうであれば、なおのこと残った薬を服用するリスクは計り知れないだろう。自宅に飲み残したり、使用しなかった薬があるのなら、この正月休みを利用して一度チェックし整理、処分てみてはいかがだろうか。

(健康ライター・浅野祐一)

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