2023年7月から放送された特撮ドラマ「ウルトラマンブレーザー」(テレビ東京系)。劇場版も制作され、24年3月に全国公開された。女性隊員・アオベエミを演じ話題となったのが搗宮(つきみや)姫奈だ。彼女はいま芸名を変え、女優・山田姫奈として活動している。
「17歳の時、東京に遊びに来た時にスカウトされて芸能界デビューしました。ちょうど自分のSNSがバズっていた頃で、ファンの方からの応援の声が嬉しくて芸能界に憧れていたんです。本当は読者モデルになりたいと思っていたんですが、当時の事務所の社長に役者を勧められ、そこから自由にやらせてもらいました。20歳の時、初主演した『爆裂魔神少女 バーストマシンガール』をきっかけに、アクションもできる女優さんになりたいと」
ところが、女優として順調に歩んでいた2024年2月、所属していた芸能事務所が突如、なくなってしまった。
「実はそのころ、ずっと夢だったカフェのオープン準備をしていまして、店舗の契約が済んで、さあ頑張ろうと思っていた矢先のことでした。全く知らされておらず、関係者の方から『今日で倒産する流れになります』と言われ、何も手につきませんでした。ウルトラマンブレーザーをやったのがちょうど10年前で、役者として『第2のステージだ』と意気込んでいたタイミングだったので、悩みましたね。役者をやめてカフェ1本にしぼった方がいいのかな、とか」
しかし、そんな彼女の悩みを、ある作品が吹き飛ばしたという。
「藤井道人監督の『青春18×2 君へと続く道』という映画を観て、涙が止まらなくなったんです。その涙は悔しいという感情でした。その時、わたしは役者やりたいんだと気づき、世界中の人に自分の作品を届けたいと思い、今の事務所にお世話になることになりました」
現在は女優業とカフェ経営を両立している。カフェをオープンするきっかけは何だったのか。
「役者をずっとやっていて、この仕事を一生続けていきたいと思う一方で、オーディションで選ばれないとお仕事ができないという職業柄、自分の足で踏み出せないフラストレーションもあったんです。で、2018年頃から自分で踏み出せる場所を作りたいと、自分なりにいろいろ勉強しました。実は私、心の病気にかかっていた経験があって、弱っている人に寄り添いたいという思いがずっとありました。朝、コーヒーを飲むと頑張る活力になるじゃないですか。ウルトラマンブレーザーが公開される1カ月前のタイミングで開業を決めました」
いわゆる芸能人の“名前貸し”ではなく、山田さんは提供するコーヒーにもこだわりを持っている。
「2カ月間、世界各国のコーヒー屋さんをめぐる旅に出ました。ベトナム、ラオス、イタリア、ノルウェーなど全部で17カ国、コーヒー文化があるところや農園なども訪れました。国によってコーヒーの果実の味が違ったり、いろんな発酵方法があることを学びました」
柔らかく明るい光が差し込むカフェ店内は、平日の昼間でも満席と賑わいを見せていた。
「実はこのお店、私の両親が内装をしてくれたんです。お母さんがリフォーム会社、お父さんが施工会社を経営しているんです。家具にもこだわりがあって、中でもこの厚みのある一枚板のテーブルがお気に入り。カフェでは月1くらいでファンの方とおしゃべりできるイベントも開催しています。先日のクリスマスイベントはすぐにチケットが売り切れてしまったので、年明けにまた開催したいですね」
最後に今後の夢を語ってくれた。
「役者としては、世界に届ける作品に出たいです。賞を獲るなどちゃんとした役者になりたいですね。経営者としては、カフェだけではなくアパレルブランドもまたやりたいなと。常に挑戦しつづける自分でありたいです」
(佐藤ちひろ)