「滋賀県民が日本を支配している」ってホント!?(1)トヨタ自動車の初代社長も…

「実は日本は滋賀人が支配している」─こんな書き込みがインターネット上で話題となっている。冗談めかした内容ながら、本気で喧々囂々の議論も起こるほどの反響に。はたして本当に日本を滋賀県民が牛耳っているのか? 大真面目に検証してみた。

 キッカケとなったのは、インターネット上のツイッターの書き込みだった。10月4日に投稿された「つぶやき」にはこうあった。

〈高島屋・西武・伊藤忠・住友・トヨタ、日本の大企業には滋賀人の血のネットワークが張り巡らされ、実は日本は滋賀人が支配している〉

 書き込みをしたのは、多数の著作がある人気ライター。詳細な説明こそないものの、世界中で流布する「陰謀論」を滋賀県民に置き換えてつぶやいた、一種のジョークとも思えるような内容だ。ところがこれにかみついたのが、ほかならぬ当の滋賀県民。反論コメントには、

〈おもしろいこと言っているつもりかもしれないけど現在滋賀在住の人間には不愉快。少なくとも私は〉

 という一方で、

〈西武グループの創始者は滋賀県出身とか。バイタリティにあふれていますね。と明るくまとめる〉

 といった書き込みが投稿され、1000近い「いいね」ボタンが押されるなど、話題となっているのだ。

 滋賀県といえば、全国的なアンケート調査では、「琵琶湖」のイメージばかりが強いが、明治以降の日本の実業界を牽引してきた老舗企業の創業者を数多く輩出している真実は見逃せない。

 さるシンクタンクの研究員が明かす。

「滋賀県が実業界で注目されているのは、その前身として江戸時代に活躍した近江商人のネットワークによるところが大きい。実際、高島屋や、伊藤忠商事、丸紅などは近江商人の創業者が立ち上げて現在まで繁栄を続けていますが、近年、その地元のネットワークにも注目が集まっています。しかも近江商人のネットワークは地元出身のメンバーで中心を固め、同郷意識を持ちながら商いをするという伝統があったようで、その地縁のつながりと結束力で、伊勢と大坂と並ぶ3大商人と称されるようになった」

 中でも、今や世界を代表するトヨタ自動車の初代社長である豊田利三郎も滋賀県の彦根出身。この一例を見ても近江商人とのつながりを感じずにはいられないだろう。

「もともと、利三郎はトヨタグループの創業者である豊田佐吉の娘婿として養子に入った。その際、当時勤めていた伊藤忠を辞めて、トヨタに入ったという経緯があるんです。またトヨタ自動車を創業した豊田喜一郎(佐吉の長男)の妻は、元高島屋の社長の娘だったことから、創業当初は滋賀との結びつきの強い企業として有名だった。これだけで日本を支配しているとは言いがたいですが、我が国を代表する大企業がいずれも滋賀出身ということで、近江商人同士のつながりの強さを指摘する経済人もいます」(研究員)

 さらに日本を代表する商社の伊藤忠と丸紅の創業者である伊藤忠兵衛(初代)を輩出したことで、現在も商社マンの「滋賀詣で」が絶えないというのだ。

「もともと、忠兵衛は1872年に繊維問屋の『紅忠』を開設して事業を発展させた。その後、伊藤忠商事と繊維部門の丸紅商店に分社化。戦中に一度は合併したが、戦後の財閥解体で再び、分社化して現在に至っている。両社の連結売上を合計すると実に12兆円にもなる計算です」(前出・研究員)

 まさにそうそうたる企業が滋賀県人の創業者によって生まれているのだ。

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