11月の米国大統領選挙で民主党陣営は歴史的大敗を喫したが、これはバイデン政権の4年間に国民が「NO」を突き付けたことに等しい。そして、そんな状況に置かれた焦りなのか、バイデン大統領の暴走ぶりに拍車がかかっている。
バイデン氏は11月20日、民間人が無差別に被害に遭い、戦争終結後も爆発の危険性があるとの理由で消極的だったウクライナへの対人地雷供与の承認を発表した。政権高官らは対人地雷について、自己起爆をコントロールできバッテリーは最大2週間しか持たないなど安全性を強調しているが、これまでの方針を突如として大きく転換した形だ。
加えてバイデン氏は、ウクライナへ供与した米製長距離ミサイルをロシア領内に向け発射することを容認。ウクライナ軍は19日、その「ATACMS」をロシア国内に初めて撃ち込んだ。英国も続くように自国の兵器をロシアへの攻撃に使用することを認め、ウクライナ軍は英国製ミサイル「ストームシャドー」でロシアのクルスクを攻撃している。
これに強く反発するロシアは21日、報復として新型の中距離弾道ミサイル「オレシュニク」をウクライナ東部ドニプロに向けて発射。15分あまりで着弾し、現場付近からは黒く焼け焦げたミサイルの部品やその破片などが発見されたという。
ロシアのプーチン大統領は、欧米がウクライナでの戦闘にこれ以上足を突っ込むのであれば、核を含む応戦も辞さない姿勢を見せているが、懸念されるのがこれまで見せたことのなかったバイデン氏の暴走ぶりである。
バイデン氏は、トランプ氏がロシア軍がウクライナ東部を占領する現状での終戦を狙っていることを警戒し、残された大統領任期の間にできることは全てやる、という姿勢に転じている。これはウクライナにとっては有り難いことかも知れないが、プーチン氏がそれに対して強硬な手段に出ることは想像に難くなく、返って事態を悪化させている。
一方、トランプ氏は終戦に向け双方を会議の席につかせ、可能な限り早く戦闘を終わらせようとしているが、バイデン氏が暴走をエスカレートさせれば、来年1月のトランプ政権発足時には戦闘がエスカレートし、そうした会議すら不可能な状況になっている恐れがある。
トランプ氏は今ごろ、「バイデンは何をやってくれているのだ、俺のノーベル平和賞のチャンスを奪うな」と不満を抱いていることだろう。
(北島豊)