「ガンガン暴れます」高市早苗氏が非主流派で“血判応援行脚”の破滅リスク

 投開票日まで1週間を切った総選挙だが、各世論調査から、自公が政権維持に必要な過半数の議席を維持できるかどうか微妙なラインと見られている。そんななか、自民党内で一段と存在感を強めているのが、石破茂首相と総裁選で激戦を繰り広げた高市早苗前経済安全保障担当相だ。

 高市氏は奈良1区の小林茂樹候補の応援のため、10月20日、22年に安倍晋三元首相が銃撃された現場である奈良市の近鉄大和西大寺駅北口ロータリーに街頭演説に立った。午後1時すぎ、黒塗りのワゴン車で駆け付けた高市氏。背後には常にSPが寄り添うように立ち、防弾カバンを手に周囲に鋭い視線を送る。周辺には100人規模の警察官が配置されるという厳戒態勢となった。政治部記者が言う。

「閣外の無役の政治家にSPが配置されること自体が異例で、これだけの警備は首相並み。政府や警察庁としては、安倍政治を継承し、かつ次期首相の可能性もある高市氏だけに、配慮せざるを得なかったということです」

 高市氏はその演説で「今大事なのは国力を強くすること」「日本経済を間違った方向にもっていってはいけない」と訴え、小林候補は、そうしたことを共にできる人とアピールした。自民党関係者はこう振り返る。

「あの演説では石破政権に挑戦するかのように『もし私も当選できたなら、ひとりの議員として自民党政調会の平場でガンガン暴れます。絶対に財政、金融、税制を間違わないように』などと強調していたのが印象的でしたね」

 高市氏への選挙への応援依頼は石破首相をもしのぐ勢いで、全国の選挙区から殺到しているという。これにできる限り応じようとする高市氏の狙いはどこにあるのか。

「高市氏の応援は総裁選で推薦人になった議員、投票した議員、アベノミクスの同志など、思想信条を共にしたり絆を重んじての動き。17日に駆けつけた裏金で非公認の萩生田光一氏(東京24区)などは、立憲民主党が有田芳生氏をぶつけてきたものの勝ち上がってくる可能性は高い。総選挙後は彼らとガッチリ手をつなぎ、今度は自民党主流派として日本政治をダイナミックに動かしてやろうという決意もあるのでしょう」(政治アナリスト)

 ただし、政治記者はこう指摘する。

「こうした血判状のような応援駆けつけは、確かに非主流派の結束を強めるでしょう。ただし、その高市支持派には裏金問題での非公認の処遇に不満を持つ候補が擦り寄っているという危うさもある。今は絆を深める候補の多くが落選した場合、高市氏にとって次のステップが完全に見えなくなるリスクも孕んでいます」

 もう後には戻れない…。高市氏はそんな心境だろうか。

(田村建光)

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