ネタを渇望する映画の都ハリウッドが目を付けたのは、“アニメ&ゲーム大国”の日本だったようだ。読売新聞電子版が昨年11月21日配信のニュース記事で、「日本の人気ゲーム、ハリウッドで相次ぎ映画化へ」と題し、日本産のコンテンツが次々にアメリカへ輸出されていく現状に触れている。
2019年5月の全米公開が予定される「ポケットモンスター」の実写映画化作品「名探偵ピカチュウ」の予告編ムービーが先日公開され、日本で産声を上げた大人気キャラクターがハリウッド最先端の映像技術により、洗練されたフォルムと画面いっぱいに動き回る奥行きのアクションを手に入れている。
他にも日本の大手ゲームメーカーであるCAPCOMが生んだ「ロックマン」や「モンスターハンター」といった名作が実写映画化される予定となっており、任天堂にも「スーパーマリオ」の再実写化のプロジェクトが控えている。そもそもゲームを実写映画化するというレールを一般化させたのは、同じくCAPCOMの「バイオハザード」の実写化と世界的な大ヒットがキッカケとされており、ハリウッドはアニメやゲームのゼロからのコンテンツ作りという観点においては日本に一目を置いている。
「加えて、最近になってゲームだけでなく、ゴジラや呪怨シリーズなどの日本産の作品が映画化されるケースが増えている背景には、ハリウッドが陥る“ネタ不足”とも無関係ではないでしょう。アメリカでは1本の映画に100億円レベルの大金を製作費として投入することも珍しくなく、とりわけCGを多用することが前提となるようなゲームの実写映画化には多額の出費が求められる為、失敗が許されません。99年にヒットした『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』のように低予算で大金を稼ぐというような概念は一般的ではなく、著名な監督やプロデューサーは100億円をかけて大作を作り、300億円を売り上げて黒字にするというドデカイ規模のビジネスを繰り広げています」(エンタメ誌ライター)
つまり、必要な製作費であれば湯水のごとく惜しまないハリウッドだが、そもそものコンテンツの根幹である原作・脚本の部分を“チャレンジ”することだけは望まないという一面もある。
「その製作費の規模から、1本の映画が大コケするだけでスタジオがあっという間に倒産する可能性すら秘めている為、ゼロからストーリーを創作するような賭けはせず、あらかじめ固定客を抱える“人気コンテンツ”しか相手にしません。最近ではアメコミや人気著作の映画化がほとんどであり、そろそろネタが渇望し始めた頃に日本のサブカルチャーに目を付けたのかもしれません。世界の市場をターゲットにできるポケモンはその筆頭候補ですよ」(エンタメ誌ライター)
黙々と“ものづくり”に徹する日本と、とてつもない規模の札束を投下して世界中へと売り込むパワーを持つハリウッド。この相性抜群な両者が手を組んだ時、映画の都はかつての輝きを取り戻すと共に、世界は改めて日本の特化したサブカル文化に畏敬の念を抱くことになるかもしれない。
(木村慎吾)