高市早苗氏はなぜ石破総理に敗れたのか…決選投票で流れた議員の思惑

 10月1日に第102代首相に選出された石破茂氏。9月27日に行われた自民党総裁選では、石破氏が決選投票で高市早苗氏を逆転して勝利した。振り返ると、1回目の投票で石破氏は154票(議員票46・地方票108)で181票(議員票72・地方票109)の高市氏に27票の差をつけられたが、決選投票では石破氏が215票(議員票189・地方票26)、高市氏が194票(議員票173・地方票21)となり、石破氏が勝利した。

 1回目の投票で2人以外の候補者に入れた議員たちの中で“石破流れ”が生じたわけだが、なぜ石破氏は逆転勝利できたのか。その背景の1つに、外交・安全保障上の思惑が考えられる。

 現在、日本は米バイデン政権と良好な関係にあり、韓国で尹政権が発足してからは日韓関係も良好である一方、中国とは台湾や尖閣、そして最近発生した邦人殺害事件によって難しい距離感にある。そのような国際情勢の中、高市氏が勝利すれば日本の立ち位置が不安定になる恐れが考えられる。

 高市氏は総理になっても靖国神社を参拝すると主張しているが、この姿勢に懸念を抱く国会議員は少なくないだろう。高市氏が総理になって靖国神社を参拝すれば、それまで良好だった日韓関係の雰囲気が後退していくことは避けられず、対日関係を重視する尹政権との間でも亀裂が生じる可能性がある。

 また不安定な日中関係においても、高市氏が中国に対し強硬な姿勢を示せば、日本産水産物の全面輸入停止に見るように、日本が多くを依存する希少金属などの輸出規制を強化されるなど、貿易面でも関係が悪化することが考えられよう。

 そして、米国も日本が右的な姿勢を強めることを望んでいない。米国は中国に対抗していく上で、日本と韓国という同盟国が互いに協力し、安全保障上の関係を強化することを望んでおり、その関係が再び冷え込んでいくことを避けたいと考えている。

 投票した議員の中には、こういった外交・安全保障上の懸念を抱き、高市氏よりは中道的な石破氏に票を入れた議員が少なくなかっただろう。

(北島豊)

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