他の重要な政治的課題そっちのけで国会で熱を帯びている、総務省の「内部文書」流出問題。当時、総務相だった高市早苗経済安全保障担当相は、当初は自身に関わる4文書は「まったくの捏造」としていたが、その後は「私に関するものは不正確」と言葉を濁し、受けていなかったとしていたレクも、「他のレク」はあったと修正するなど、一気にトーンダウンしている。
「周知のように文書は、14年から15年にかけて、当時の礒崎陽輔首相補佐官が総務省に対して、放送法が規定する『政治的公平』の解釈変更を求めたやりとりが記されているものです。そして、その時期を振り返れば、『報道ステーション』(テレビ朝日系)の古舘伊知郎、『クローズアップ現代』(NHK)の国谷裕子氏、『NEWS23』(TBS系)の岸井成格氏といったキャスターが相次いで降板しています。当時は安保法制の解釈改憲やアベノミクス批判を行ったための『圧力』だったのでは、と見られていましたね。14年11月には、自民党が『報道ステーションは公平中立な番組作成をしていない』として要請文を送ったことで、政権与党による言論介入との意見も上がっていました。今回の文書の存在によって、当時から自民党には放送法の解釈を変えようとする政治的な意図があったことが明白になった、とも言われています」(全国紙記者)
さらにこの文書流出の意味について、全国紙記者が解説する。
「4月に行われる統一地方選で、高市氏の地元・奈良県では県知事選が行われますが、高市氏は元秘書官だった総務省出身者を擁立しました。そのため、新人と現職で保守分裂を引き起こし、維新に票を拾われるのではないかと批判されています。また、最大派閥の安倍派で後継者が決まらない中、まるで安倍元首相の傀儡かのごとく振る舞ってきた高市氏に身内は冷たいといいます。そんなことから、今回の文書問題は『高市潰し』ではないかという見方がもっぱらなのです」
だが高市氏に吹く逆風はこればかりではない。実は地元・奈良地検の捜査対象になっているのだ。
「昨年12月に高市氏が代表の自民党奈良県第2選挙区支部の政治資金収支報告書で、20万円を超えた分については記載すべきパーティー券購入が記載されていなかったとして、神戸学院大学の教授が高市氏らを奈良地検に政治資金規制法違反で告発しました。ところが告発を受けて『しんぶん赤旗』が取材に動き出したとたん、22万円だった領収書が12万円に差し替えられて報告されていた。そのため今度は『有印私文書変造・同行使罪』で、3月6日に刑事告発されたのです。奈良地検はこれを受理、捜査が始まっているといいます」(関西マスコミ関係者)
そんな高市氏は件の文書問題で「捏造が事実でなかったら議員を辞めるか」という質問に対し、「結構だ」と息巻いていた。捏造に変造…果たして彼女はこの難局を乗り切ることができるのか。
(猫間滋)