【中国】習近平が台湾有事にビビり南シナ海でやりたい放題の姑息事情

 中国が南シナ海で実効支配を強化している。フィリピン沿岸警備隊は9月半ば、パラワン島から140キロほど離れたサビナ礁の権益を守るため5カ月にわたって停泊させてきた日本製の大型巡視船を、サビナ礁から撤退させたと明らかにした。

 サビナ礁はフィリピンが実効支配する他の環礁へ補給活動を行う際の重要な要衝にあるが、中国船がサビナ礁で埋め立て工事を行っていたとして、今年4月中旬から大型巡視船を現地に派遣してきた。しかし、それ以降中国による妨害や破壊行為が横行。8月末には中国海警局の船舶が大型巡視船と衝突し側面に大きな穴が開くなどの損傷を負い、脱水症状や胃痛に苦しむ乗組員たちが緊急搬送された。フィリピン政府は修理や補給が終わった後に大型巡視船をサビナ礁に戻すというが、中国船との間で再び衝突が発生する恐れがある。今回の件で、中国がサビナ礁での実効支配を固めることは間違いない。

 中国によるこういった過激な行動は、今後一層激しくなるだろう。「ウクライナの次は台湾」と頻繁によく言われるが、台湾の前に南シナ海が新たな戦場になる可能性の方が圧倒的に高い。最大の理由は、中国の行動を抑止できるものがないからだ。

 中国は台湾への武力行使の可能性を排除していないが、規模としては中国軍にはるかに及ばないものの台湾も国防力を強化しており、中国が目指す台湾制圧は決して簡単なものではない。台湾軍も中国軍による制圧を抑えられるよう米国からの軍事支援に頼っており、習近平主席も簡単には作戦開始のサインを送れない。また、台湾防衛には米軍が直接関与してくる可能性がある。バイデン政権は関与する、しないの明確な回答は避ける“曖昧戦略”を貫いているが、これが中国にとって大きな抑止となる。

 米軍が介入してくることを中国は最も警戒しており、実際、中国にとって台湾有事のハードルは高い。さらに、「台湾有事は日本有事」と言われるように、日本を巻き込むことになれば日米安全保障条約の適用対象となり、米軍は対日防衛義務の履行を迫られることになり米中の直接衝突が現実問題となる。

 しかし、南シナ海にはこういった懸念材料がない。中国とフィリピンの上述のような衝突に米軍は介入してこないので、中国がやりたい放題できる環境がそこにはある。中国は南シナ海を内海化していくだろうが、そこで軍事的な衝突が激化し、南シナ海が明日のウクライナとなるだろう。

(北島豊)

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