佐藤弘道を「失意のどん底」に…「脊髄梗塞」への適切な対処法とは?

 NHKの「おかあさんといっしょ」でおなじみ、“ひろみちおにいさん”ことタレントの佐藤弘道が、研修会指導に向かう機内で体調を崩し、下半身麻痺となって歩けなくなったのは、今年6月のこと。9月12日に「情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)に出演した佐藤は、当日の様子をこう振り返った。

「朝起きたときから左足がむくんでいるような感じでしびれてたんですが、寝相が悪かったのかなと。荷物を運ぼうとしたら、左足だけ泥沼に落ちるようにカクンと落ちていって。リビングで一人で転んだんですけど。妻も『あっ、転んじゃった』くらいで…」

 ところが、その数時間後、突然体調が急変。鳥取空港到着後には「冷や汗と痛みでどうしようもなかった。CAさんに車いすを用意してもらった」として、下半身まひ状態で鳥取の病院へ緊急入院することに。そこで医師から告げられたのが、「脊髄梗塞」という一般的には聞きなれない病名だったわけだが、実はこの病気は現代の医学では治療法が確立されておらず、一生車いす生活を余儀なくされる可能性も高いことから、一時は本人も「失意のどん底を経験した」という。

 脊髄というのは、脳から出て背骨の中を腰に向かって走る太い神経で、つまり、脊髄が脳からの信号を神経に伝える役割を担っている。その血管が血栓などの理由で、血液供給が断たれてしまうと、神経細胞が酸素不足に陥り、深刻なダメージを受ける。それが脊髄梗塞と呼ばれる病気だ。血管が詰まるという意味では脳梗塞や心筋梗塞も同様だが、他の臓器に比べ血液の供給量が限られる脊髄で血液供給が断たれてしまうと、短時間で神経細胞が死んでしまう。そのため急速に激しい痛みや麻痺、しびれなどの症状が現れる。

 ところが、脳梗塞などによる脳卒中に比べ、脊髄梗塞というのは、発生頻度が極めて低い病気であるため、初期症状から医師がこの病気を疑うケースは稀。結果、発症後6~8時間以内に投与すれば血栓が溶かせる「血栓溶解療法」が用いられるケースも少ないというのが現状だという。

 ただ、発生頻度は低いものの、突然、両手や両足が動かなくなった場合は、脊髄梗塞を疑うべきだ。なぜなら、脳梗塞の場合、左右のどちらかで症状が出ることが多く、両手両足という場合は極めて稀だからだ。有効な治療法が確立されていない以上、1分1秒の差で生死やその後の後遺症の程度がずいぶん違ってくる。「変だな?」と思ったらすぐに病院へ。現段階では、それが唯一の適切な対処法というわけなのである。

(健康ライター・浅野祐一)

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