医療現場の知られざる本音…医師が「面倒に感じる患者」を「流してしまう」ケースとは

 SNSの普及により、昨今は身体に何か異変を感じると、まずはネットでチェックし、ある程度調べてから医療機関を訪れる患者が増えている。もちろん、ヘルスリテラシー向上の観点から言えば、自身でまず調べてみることは、決して悪いことではない。しかし、ネット上には正確性を欠く情報も膨大で、よくも平気で、そんなエビデンスのない記事を掲載したものだ、と驚くこともしばしばだ。

 ところが、患者の中には、そういった記事を鵜呑みにし、「先生、この症状が出ているのはこの病気だからでしょ。だったら、この検査をしてください」と、自身で得た知識をもとに、医療を指定してくるケースも増えていると聞く。ただ、言うまでもなく、医師は患者がどんな症状を訴えているのか、さらにその原因となる要素を聞きとり、必要があると判断した場合に検査を行う。

 そのため、患者から「この検査をしてほしい」と指定された場合、対応に苦慮する医師も少なくない。それでも、大方の医師は、患者が納得するよう説明をしてくれるだろうが、決められた時間内で患者全員に長い時間を割くことは不可能だ。そうなると、どの患者にどれだけの時間を割くかは医師の考え次第。医師も人間だし、「面倒な患者」とは出来るだけ関わりたくないため、ならば患者が指定するがまま「流してしまう」ケースも少なくない。特に患者数が多い大学病院などの医療現場では、残念ながらこういった場面が顕著なのである。

 一方、それとは逆に、問診の際はすべて医師任せ、という患者も多く、こちらはこちらで厄介だ。というのも、医師は基本的に、問診や医療機器を用いた検査により病気の原因を見つけていく。そのため、客観的なデータはあればあるほど、原因に近づく時間が短縮できる。しかし、患者の中には現在、自分の体に起こっている不安要素をすべて打ち明けることが出来ず、「医者なんだからわかってくれるだろう」と勝手に思い込んでいる場合も少なくないのが現実だ。

 ただ、こうした考えはオススメできない。たしかに医療機器の進歩により、ある程度的確な判断は出来るようになったとはいえ、患者が今どんな症状で、それがいつからで、どう変化してきたのかなど、きちんと聞き取ることが適わなければ、原因究明は出来ない。

 結局は、医師と患者との関係も信頼関係が大切だということ。医師のモチベーションを上げるのも下げるのも、患者のコミュニケーション能力にかかっているということをお忘れなく。

(健康ライター・浅野祐一)

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