70年代を代表する学園ドラマの金字塔「おれは男だ!」(日本テレビ系)にて、森田健作(74)が演じた小林弘二と対立するヒロイン、吉川操を演じた早瀬久美(72)。日本中の男性を虜にした〝吉川く〜ん〟が、撮影秘話を振り返る!
─まず、本作品のヒロイン役に抜擢された当時の心境は?
早瀬 あの頃はまだ、映画の方が格上で「タダで観られるテレビに出るなんて信じられない!」みたいな風潮もあったんですけど、私は違う考え方をしていて。まだ私も若かったから同世代の人にもっと私を知ってもらいたいっていう気持ちが強かったです。だから、若者向けの情報番組だった「ヤング720」(TBS系列)の司会をやったこともあるんですよ。なので、「おれは男だ!」に出演が決まった時はうれしかったですね。
──同世代の人たちと共演するのが楽しかったとか?
早瀬 10代で女優としてデビューしたので、ちゃんと学校に通えなかったこともあって、あまり高校生活を満喫できなかったんです。ちょうどこのドラマは、高校を卒業する頃にスタートしたから、青春を取り戻すみたいな感じはありましたね。遠くにロケに行くってなると、みんなで一緒に移動して同じホテルに泊まって。ほんとに修学旅行みたいな感じ。枕投げこそ、しませんでしたけどね(笑)。
──共演者同士で恋愛に発展することは?
早瀬 ここだけの話ですが、他の出演者同士は、何組かカップルになっていましたね。私と健ちゃんですか? それはないですよ(笑)。だって、健ちゃんは売り出し中の役者さんで、マネージャーさんや付き人さんなど、取り巻きの人たちが完璧にガードしていましたから、そんな隙なんてありませんでした。何より、健ちゃん自身が、そういうタイプではなかったので、本当に仲がいい同級生みたいな関係かな。
──他の男性共演者からのアプローチは?
早瀬 あれは、私に対するアプローチだったのかな?と、今になって思うこともあるんですが‥‥、皆さん、シャイなのか、ヒロイン役の私に気を遣ってくれたのか、ハッキリしない感じの方ばかりでしたね(笑)。
──では、思い出に残る出来事を挙げるとすれば。
早瀬 第1話のゲストに当時若い人たちから人気があった「フォーリーブス」の方々が出演された時はすごかったですよ。ロケを見物しに来た方たちの黄色い声援が止まらなくて。健ちゃんもその様子を見て、「俺を見に来たファンじゃなかったのか」って、ちょっと落ち込んじゃったりしてね(笑)。主演の健ちゃんを凌ぐような人気でした。
──森田さんとのキスシーンもありましたが‥‥。
早瀬 キスと言っても、おでこにチュッという感じですけどね(笑)。あの時代の高校生はそれがリアルだったんですよね。それまで、あんまりキスシーンの経験がなかったからドキドキしてね。雰囲気もロマンチックだったからうれしかったですね。そういえば、同じ時期だったと思うんですけど、ザ・ドリフターズの映画に出演させていただいた時には加藤茶さん(81)とキスしたこともありますね(笑)。
──ドラマがヒットした実感や反響はどんな具合で。
早瀬 やっぱり、映画とは全然、違いましたね。映画は銀幕の人っていう感じで、街中で見かけても声をかけてくださる方なんて少なくて。でも、テレビは違いました。親近感が湧くから、色々なところで声をかけられるようになって。一番驚いたのは、家に帰ったら同居する母親とファンの方が一緒にお茶を飲んでて(笑)。当時は、雑誌にタレントさんたちの住所が掲載されていたから、それを見て訪ねて来られたんでしょうね。私が警戒している様子を見て、すぐに帰ってくださいましたけど。
──名作だけに、今も共演者の方とは交友を?
早瀬 健ちゃんとは、今も仲よくお付き合いをしています。政治家をしている時は、代議士の方々との交流会に呼んでいただいて、一緒に楽しくお食事をしたこともあります。他の共演者の方は、業界を辞めてしまったり、亡くなった方もいて‥‥。一度、Facebookで「同窓会をやりましょう」って呼びかけたこともあるんですが、結局、実現しませんでした。
──同窓会も兼ね、令和版の「おれは男だ!」が制作されたら楽しそうですね?
早瀬 それは、面白そう! 実は今、ラジオ番組でドラマのシナリオを書いているので脚本家としても参加できたら楽しいかも。健ちゃんが、どんな時でも子供の味方をしてあげる先生役で、今までにない役者としての魅力を引き出してあげたいですね。もちろん、マドンナ役は私にしちゃいますけどね(笑)。
早瀬久美(はやせ・くみ)51年兵庫県生まれ。66年、岩下志麻主演の「紀ノ川」で映画デビュー。ドラマ「おれは男だ! 」でブレイク後は、バラエティー番組の出演や司会業など幅広く活動。現在は、ラジオ番組「早瀬久美のあの日をもう一度」(Tokyo Star Radio)のパーソナリティとしても活躍中。
*週刊アサヒ芸能9月12日号掲載