先日、韓国の情報機関である国家情報院により、北朝鮮の金正恩総書記の体重が140キロに達し、高血圧と糖尿病の悪化により心臓疾患のリスクが非常に高い状態にある、との分析結果が国会で報告され、大きな話題になった。
同情報院によれば、正恩氏は30代前半から高血圧と糖尿病に悩まされ、専門医が処方する薬を常用。しかし過度のストレスと暴飲暴食による影響なのか、既存の薬では病状改善が見られず、海外の大使館に別の薬を探すよう指示したとも伝えられていた。
しかし、実際の身体は現在、どのような状況で、どんな薬を対処されてきたかは不明で、海外で探すよう指示していた新薬についても、謎に包まれたままだった。
そんな中、韓国のTV朝鮮の「ニュース9」が8月5日、韓国政府当局関係者の情報として、ここ最近、正恩氏が点滴でジャコウの薬剤投与を受け、血圧が下がるなど効果が出ていることを確認。そんなことから、正恩氏自ら高齢の部下たちにもジャコウの薬剤投与を勧めている、と報道し、関係各位の間で驚きの声が上がっている。
「ジャコウは、かつてネパールや中国、モンゴル、ロシアなどに生息していた ジャコウジカの雄の腹部にある香嚢(ジャコウ腺)から得られる分泌物を乾燥させた香料で、ムスクとも呼ばれインドや中国では古くから香料や生薬の原料して用いられてきたものです。甘く粉っぽい独特の香りで、香水の香りを長時間保つ効果があることから、香水の素材として使われる一方、男性ホルモンを多く含むため、興奮を高める滋養強壮薬として使われてきたんです」(アジアの漢方薬全般に詳しいジャーナリスト)
しかし、もともと生息数が少なかったジャコウジカは、乱獲により絶滅の危機に瀕した。そこでワシントン条約により商業目的での国際取引が原則禁止され、現在は天然のジャコウジカ由来のジャコウを入手することは困難な状況になっている。
「そうなればなおのこと、最高級の滋養強壮剤としてニーズも高まる。しかもジャコウは、ジャコウジカ1頭から30グラムしか手に入らないため、価格が金の3倍にも及ぶ超貴重な薬剤となった。すると闇の業者が暗躍し、密猟が禁じられたチベットやネパール、モンゴルなどでジャコウジカを捕獲し、分泌物だけを採取し、それを金に糸目をつけない顧客に販売するというシステムが確立した。今回、正恩氏の点滴に用いられたとされるジャコウジカの成分も、そんな闇ルートを媒介して北朝鮮に渡ったとも考えられます」(同)
大韓医師協会の談話を伝えた「ニュース9」によれば、ジャコウを静脈に投与した場合、糖尿病や高血圧、高脂血症などに非常に効果的だったとの研究結果も多々あり、その有効性は期待が集まっているというのだが…。
「鹿を滋養強壮の源としていたと聞いてすぐに思い出すのが、ロシアのプーチン大統領。プーチン氏も老化を食い止める手段として、シベリアアカシカの枝角から採集した血を飲んだり、血の風呂に入ったりしてきたことは有名に話。ただ動物保護団体は、鹿を拘束し角を切り落とす行為に対し、科学的根拠のない野蛮な行為だとして批判している。“鹿つながり”とはいえ、プーチン氏が正恩氏にロシアで捕まえたジャコウジカを提供し成分を抽出させた、というのは考えすぎかもしれませんが、昨年来からの蜜月ぶりをみると、全くない話ではないとも思えてしまう。いずれにせよ鹿にとってはとんだ災難です」(同)
動物保護団体の批判などどこ吹く風。健康維持のため、2人の独裁者による鹿頼みは、しばらく続きそうだ。
(灯倫太郎)