習近平がプーチンと蜜月アピール裏で「ロシア排除」中央アジア諸国と接近する腹黒駆け引き

「(国際情勢は)変乱が入り交じっているが、(中露は)独特の価値観を絶えず育成している。両国の正当な権益を守るため、国際関係の基本的なルールを守り抜くために努力しなければならない」

 カザフスタンで開催された上海協力機構(SCO)首脳会議に参加した中国の習近平国家主席は7月3日、ロシアのプーチン大統領と会談し、両国の変わらぬ関係強化を強調。一方、プーチン氏も両国関係を「史上最高の状態にある」として、「平等や互恵および互いの主権尊重の上に築かれている」と対米国をにらみ、変わらぬ蜜月ぶりを国際社会にアピールした。

 とはいえ、言葉とは裏腹に両国の間では相変わらずのせめぎ合いが続いているようだ。

 両国の問題に詳しいジャーナリストが説明する。

「2022年からのロシアによるウクライナ侵攻で、中国はロシアを経済的に支援する一方、国際世論の声を受け平和仲裁者のイメージを強調してきた。これは欧州と米国との溝を広げ、欧州を中国側に引き寄せようする戦略。しかし実はその裏で、戦争継続のためロシアに物資や中国製製品を大量に販売し、ロシアが欧州に販売できなくなったエネルギーを格安で購入して巨額の利益を得てきたんです。ところが、中国のこの二枚舌戦略が欧州諸国に見透かされ、完全にソッポを向かれてしまった。結果、このままではまずい、となった中国はロシアとの関係に距離を置くというスタンスを取らざるをえなくなったというわけなんです」

 しかし当然、ロシア側としては、ふざけるなという話である。さっそく、中国が長年後ろ盾になってきた北朝鮮と接触。昨年9月には金正恩総書記が訪露。そして今年6月にはプーチン氏自らが北朝鮮を訪問して両氏は新条約に署名し、正恩氏によって東西冷戦時代の「軍事同盟」復活が宣言された。

「中国としてはロ朝が接近することで、対北朝鮮への影響力低下はむろんのこと、北朝鮮がロシアからの技術提供で軍事力が向上すれば朝鮮半島情勢の不安定化の懸念も強まり、結果、韓国内に軍事基地を持つ米軍の軍事力強化に繋がってしまう。つまり、中国としては非常によろしくない事態に展開になる恐れも出てきたということです」(同)

 そんな背景もあってか、一部報道によれば、中国は次のターゲットをキルギス、ウズベキスタンなど、中央アジア諸国にシフトしつつあり、その布石が昨年、習政権による「ロシア抜き」での同地域の5カ国首脳を中国に招いた経済・安全保障協力会議だったのではないかとみられている。

「実は、中国とキルギス、ウズベキスタンには、3国を結ぶ鉄道建設事業があったものの、構想から30年以上が経過して遅延が続いていたんです。理由は、この鉄道が実現した場合、地政学的にみて中国が大きな影響力を持つことを恐れたロシアが大反対していたからだと伝えられている。ところが不思議なことに、習氏のツルの一声で、今年6月には北京で鉄道建設事業に関する政府間協定の調印式が行われ、キルギスでは年内着工の噂まで出ている。習氏とプーチン氏との間にどんな取引があったのかはわかりませんが、この腹の探り合い、せめぎあいは当分続くことになるでしょうね」(同)

 欧米から「悪の枢軸」と呼ばれる北朝鮮、ロシアだが、さすがに同類扱いされたくない中国と両国の関係の行方が気になるばかりだ。

(灯倫太郎)

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