「ユーロ2024」でエムバペが精彩欠くフランス極右政党躍進の動揺

 ドイツで現在開催中の、サッカーのヨローッパナンバー1国を決める欧州選手権EURO(ユーロ)2024。22年のカタールワールドカップ準優勝のフランスは、下馬評では断トツの優勝候補だがどうもパッとしない。

「日本時間の7月2日に強豪国ベルギーを1-0で退けたフランスですが、予選リーグ4試合でわずか3得点。カタールワールドカップの決勝戦はアルゼンチンの至宝リオネル・メッシと、神様ペレ以来の10 代でゴールを決めたキリアン・エムバペの新旧スター対決で、軍配はメッシに上がりましたが、エムバペは圧倒的なスピードで今後のワールドサッカーを代表する選手になることは明らかでした。エムバペは今大会は25歳にしてキャプテンを任されていますが、初戦のオーストリア戦で鼻を骨折。マスクを着けての出場には『視界が狭まるし、汗もたまって。マジで最悪』と言っているように、予選リーグではPKによる1得点しか挙げられませんでした」(スポーツライター)

 そのエムバペ、大会初日を控えた前日の記者会見では極右政党が台頭するフランスの政治状況に言及し、「(予定されている下院議員選挙で)私たちは行動する必要がある」と発言したことで世界を驚かせた。だがプレーの不調同様、彼の思いは人々を動かすことはなかったようだ。

「6月9日に行われた欧州議会選挙では、マクロン大統領率いる与党連合は、ルペン氏が率いる極右政党の国民連合(RN)に大差で破れました。危機感を抱いたマクロン氏は下院選挙に打って出ましたが、6月30日の1回目の投票でやはりRNの進捗を許し、与党連合は3位に沈没。さらに明確に勝敗を決定する7月7日の2回目の投票を前に、もはや優劣は決した状況です」(全国紙記者)

 かつてのサッカーフランス代表は人種差別意識が強く残り、歴史的な激闘として記憶される1982年のスペインワールドカップの準決勝でPK戦で西ドイツに破れた際には、日本の解説者が黒人がPKを蹴らせてもらえなかったことを言及したほどだ。

「ところが時代を経て移民の受け入れが進むと共にそれも薄れ、地元開催の98年ワールドカップを移民の子であるジダンをエースとして擁して制すると、多様性と融和の象徴として賛美を浴びました」(前出・スポーツライター)

 そのため排外主義の極右政党の勢力拡大は、エムバペら黒人選手のアイデンティティーを揺るがすものとなるのだが、多くの国民にその声は届かない結果に。ならばマスクのハンデはあっても奮起して、自らのゴールでチームに優勝をもたらしてから、再び国民に語りかけてもらいたいものだ。

(猫間滋)

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