かつての「定年後は悠々自適に」というのは、もはや昔の話。年金が引き下げられ、体調は下り坂の一途。挙句、日頃の憂さを晴らす職場もなくて‥‥そんなアナタに「年収300万円時代」をいち早く予見した、経済アナリストの森永卓郎氏が孤独、健康、金の「3K不安」をぶっ飛ばす実践法を提案。これを読めば「人生100年時代」も怖くない。
日本の格差社会は深刻さを増すばかり。ガソリンの高騰はまだまだ序の口。食料品や日用品の値上げが目白押しなのに、年金給付額は抑制されるばかり。
仲間と語らい、気を紛らわせようと思っても、職場中心の人間関係は、定年と共に雲散霧消。相手をしてくれるのは、妻とペットの犬だけ。加えて60の声を聞いた途端に、体力が急低下。犬の散歩中、ちょっとダッシュしただけで心臓がバクバクし、メタボ体型のままでは健康不安も募るばかり。そんな、日常生活が身に覚えのある読者も少なくないだろう。
経済アナリストとして活躍している森永卓郎氏は03年に出版した「年収300万円時代を生き抜く経済学」(光文社)などの著書で、早くから日本における格差拡大の到来を指摘。獨協大学教授として教壇に立つ一方、コメンテーターをこなしながら、近著「長生き地獄」(KADOKAWA)で、将来どうすれば少しでも暮らしやすくなるかを提言している。
森永氏は今年7月で65歳を迎える。一般的には「老後」に突入したと言っていい。そんな森永氏は実際にどんな暮らしをし、「老後リスク」と呼ばれる「孤独」「健康」「金」の「3K」と向き合っているのか。
まず誰もが最も気になるのは、「金銭」問題だろう。
「私は、これまでずっと『少子高齢化が続く日本では年金制度の維持が難しくなる』と言ってきました。現在でも、厚生年金加入者の平均受給額は月額約15万円。国民年金は約6万5000円程度に過ぎない。支え手不足もあり、将来的な給付水準は相当額ダウンすると予想されます。今から30年後には厚生年金で約4割、国民年金で約3割程度減ると考えられます。つまり厚生年金なら夫婦で月13万円、国民年金なら1人4万2000円、夫婦でも8万4000円くらいです。確かに減額にはなりますが、この金額の中で生活できれば、老後の問題もクリアできます」
いわゆる「老後2000万円問題」という金融庁の試算レポートが波紋を呼んだことがある。年金の支給額の減少により、生活水準も低下。生活費が賄えなくなる前提で、少なくとも2000万円程度の預貯金が必要だと論じたのだ。問題の深刻さもさることながら、老後に支給される年金だけでは暮らしていけないのではないかという国民の潜在的な不安は強くなっている。そこで森永氏が勧めるのが「住む場所」の選択だ。
「どこで暮らそうと、生活を切り詰めれば暮らせないことはありません。ただ、場所によっては〝危ない〟ケースもあります。例えば大都市のマンションの場合、分譲であっても月に5万円くらいは管理費や修繕積立金がかかります。これでは(夫婦で)8万円しか残らず、一気に生活が追い詰められます。それを避けるためにどうしたらいいのかを考えると、田舎に移住するか、私の勧める『トカイナカ』に住むか、のどちらかしか手はないと思います」
*森永卓郎が提唱「3K不安」解消でつかむ“幸福な老後”(2)につづく