家庭菜園による野菜作りは、金銭面のみならず、健康面に思わぬ効果をもたらしたというのだ。
「昨年の9月までパーソナルトレーニングジム『ライザップ』に通っていたので、月に一度、計量をしていました。すると、農繁期には筋肉量が増え、1〜3月の農閑期には減ることが分かりました。ウチの畑は農薬や除草剤を使っていないので、毎日草取りをしなければいけない。もう強制労働ですよ(笑)。20種類以上作っているので、一つの作物の収穫が終われば、次のモノに植え替えなければならない。その度に畑を掘り返して肥料遣りを行うのですが、これは土木作業並みにハード。筋肉量が増えるはずです。
老化は足から始まるので、絶対に足腰は鍛えた方がいい。ジムで筋トレもいいですが、畑や田んぼで働けば体は十分に鍛えられます。私自身も畑仕事で足腰を鍛えることができました。
もともと野菜は好きじゃなかったのですが、自給自足が目的ですから作った野菜は自分で食べる。結果的に食生活も改善されました。病気になれば医療費もかかるので、健康に越したことはありません」
金、健康と並んで定年後のリスクと言われているのが「孤独」。サラリーマン時代の付き合いが急になくなり、新たなコミュニティーを作れず悩む人も多く見受ける。この点について、森永氏は次のように話す。
「会社の中の人間関係しかない人は、確かに悩むかもしれないですね。私の場合は前述のように農業仲間がいるので、この人たちとのコミュニティーがまずあります。彼らとは、野菜の育て方のアドバイスをし合ったり、種や苗を融通し合ったりしています。
また、畑を始めてから、近所の人とのコミュニケーションが増えました。畑をいじっていると、通りかかった近所の人が声をかけてくれるのです。日々育っていく作物の様子を見るのは、彼らも楽しみのようで話が弾みます。
それからもう一つ、8年前、所沢市内に『B宝館』という博物館を開設しました。私が子供の頃から集めてきたミニカーやお菓子の付録など約10万点を展示しているのですが、ここには日本中からマニアの人たちが訪れてくれます。なので、孤独になるということは全くありません。今やっている大学教授やテレビ・ラジオの仕事がなくなっても、〝こちら側〟の人間関係があるので心配もしていません。
老後で最悪なのは、独りぼっちで朝から晩まで家に引きこもるというケースです。人間は、することがないというのが一番辛い。何でもいいからやればいいと思いますよ。例えば、トカイナカの畑には昆虫や鳥、動物が山ほどいます。それらを写真に撮ってブログに上げていたら、昆虫マニアのやくみつるさんが食い付いて『もっと見せてくれ』と言ってきました。そんなことから自分に合ったコミュニティーが見つかるかもしれない。仮に見つからなくても、自分が楽しければ孤独を深刻に悩むようなことにはならないと思います。
都心のおしゃれな飲食店やナイトスポットも確かに楽しいでしょう。ただ、そこで楽しめるのはお金のある人だけです。そこから脱却すれば、1円もかけずに楽しい老後を送ることができますよ」
郊外暮らしで出費を抑えて体力をアップする。これらのコツを実践できれば、定年後のリスクはかなり解消できるはずだ。
*「週刊アサヒ芸能」7月7日号より