接近するロシアと北朝鮮に中国が加わる「日本包囲網」最悪シナリオ

 ロシアのプーチン大統領が6月19日未明、北朝鮮の首都平壌に到着した。プーチン大統領が北朝鮮を訪問したのは2000年7月以来の24年ぶりで、金正恩総書記がプーチン大統領の到着を空港で迎え、両者は軍事・安全保障面を中心に関係を深めていくことで一致した。

 両氏は昨年9月にロシア極東アムール州でも会談しており、最近はロシアと北朝鮮が急速に関係を深めている。当然だが、両国が接近を図る背景はそれぞれのメリットがあるからだ。ロシアは2年以上にわたってウクライナ侵攻を継続しているが、兵士や弾薬の数などが決して十分と言えるような状況ではなく、武器や弾薬など軍事面で支援を必要としている。そこで目をつけたのが北朝鮮で、ロシアは北朝鮮に接近することで武器や弾薬を調達し、ウクライナでの戦闘でも北朝鮮製が多く使用されている。ロシアが使用した爆弾などの残骸から、ハングルの文字が記されているものも発見されている。

 一方、軍事支援の見返りに北朝鮮がほしいのが宇宙開発支援だ。ロシアは長年にわたって宇宙開発で世界の先端を走るが、北朝鮮は5月にも失敗に終わったものの偵察衛星の打ち上げ実験を行うなど、宇宙開発に尽力を注いでいる。また、懸念されるのがロシアによる核開発支援だ。ロシアは世界で最も多くの核弾頭を保有しており、核開発を強化したい北朝鮮からすれば、是が非でもロシアからの核開発支援を獲得したいはずだ。

 このように、両者は“支援し合う”ことで利害が一致しており、ロシアと北朝鮮の蜜月関係はいっそう強化されていくだろう。

 そして、今後懸念されるのが、これに中国が接近を試みるシナリオである。ロシアも北朝鮮も中国も、米国主導の国際秩序に対する不満を募らせ、それを打破しようという範囲で3カ国の思惑は一致しており、日本を含む東アジアの安全保障において米国を排除したい。習近平氏は依然、アジアの安全保障はアジア人が担うべきだとの認識を示しており、ロシア北朝鮮の関係強化に中国が加わるとなれば、日本は北方領土のロシア、核・ミサイルの北朝鮮、尖閣諸島の中国という3正面の脅威に同時多発的に直面する恐れがある。

(北島豊)

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