【中国】誰も逆らえない「女帝」習近平夫人の軍幹部就任で生じる致命的な“軋轢”

 香港紙「星島日報」が、習近平主席夫人である彭麗媛氏が共産党中央軍事委員会の幹部審査評議委員会専任委員に就任したとみられると報じたのは5月5日のこと。

 報道によれば、彭氏が軍関連の学校などを訪問し、上層部の人材育成を視察する姿がSNSにアップされ、その写真の肩書にハッキリとその役職が記されていたというのである。

 彭氏は80年代初頭に「在希望的田野上」などの曲で一世を風靡した中国の元国民的歌手。87年に当時厦門副市長だった習氏と結婚したが、22歳で人民解放軍総政治部歌舞団に入団した際に中国共産党党員となり、ファーストレディであると同時に、人民解放軍での階級は少将という肩書も持っていたとされる。

「歌手時代、中国では宋祖英や殷秀梅などと同様、民族歌謡・愛国歌謡の大御所として知られ、日本のメディアでも『中国の美空ひばり』と紹介されたこともあります」(中国ウオッチャー)

 人民解放軍総政治部の歌舞団団長時代は、団を率い東京と札幌で中国歌劇「木蘭詩篇」公演(2009年11月)を開催。彭氏自身が総芸術監督を務め話題になったが、17年には解放軍芸術学院院長から退いた、と伝えられていた。

「今回、彭氏が就任したとされる『中央軍事委員会・幹部審査評議委員会』は、習近平氏の肝いりで16年10月に設立されたもので、『軍事委員会主席責任制を貫徹させるための重要措置』をスローガンに謳っているように、文字通り習氏自らが軍人事掌握のための要とする機関。情報筋によれば、彭氏は翌17年から同上級評議員に就任。このポストは、軍の将校などの昇進に際し承認を与えるもので、したがって権限は絶対的。つまり、彭氏らによるツルの一声で人事がひっくり返ることもある。そんな軍の人事権行使に影響力を持つセクションの中の一人に実の妻を起用し、今度は専任委員に就任させたわけですからね。『星島日報』の報道を受け専門家の間では、これで人民解放軍は夫婦による『個人商店』により思いのままに操られる可能性が強くなった、との憶測も飛び交っています」(同)

 近年の習政権下では、汚職疑惑などで多数の軍高官が粛清されており、すでに夫人の関与があったとも考えられるのだが…。

「中国経済が低迷の一途をたどる中、軍事面でも対米、対台湾問題と、厄介な問題が山積し、必ずしも習氏と軍部との関係が風通しのいいものとは言い難い状況。加えて軍の幹部の中には習氏に対し『軍のことを知らない政治屋に何がわかるか』と、敵対心を持っている者も少なくないといわれます。そんなことから夫人が政界に物申したこともあったのですが、さすがに軍部に口を出すことはなかった。報道が事実であれば、習氏はそんな状況お構いなしに妻を最重要ポストに就けたわけですから、今後、軍部との間でさらなる軋轢が生じるのでは」(同)

 ファーストレディー、彭麗媛氏の言動が注目される。

(灯倫太郎)

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