時刻表や駅構内、列車内などに表示されている鉄道の路線図。だが、実際には列車が走っているのに表示されていない区間があることをご存知だろうか?
それは貨物列車専用の貨物線。ただし、旅客用の臨時列車として稀に使用される場合がある。例えば、6月7・14・21・28日の4日間限定で吉川美南-鎌倉で運行されるJR東日本の臨時特急「鎌倉(平日おさんぽ号)」は、途中で一般向けの路線図には存在しない府中本町-鶴見間の貨物線「武蔵野南線」を通る。
また、7月6日限定で松戸-鹿島神宮-両国を結ぶイベント列車「第4回祈念号」の目玉は金町-新小岩間の貨物線「新金線」を通る点。22年7月と23年1月、10月に運行された祈念号のルートは異なるが、いずれも新金線を経由している。普段は乗車できない路線を走るとあって鉄道ファンから大きな注目を集めた。
この「新金線」は約7㎞と距離は短いものの、じつは地元・葛飾区が中心となって将来の旅客化を目指している。地域には北から常磐線、京成線、総武線と都心と千葉・茨城方面を結ぶ3本の主要路線があるが、最短ルートで南北を結ぶ旅客線はなく、いったん都心や千葉県に入るなど迂回する形で乗り継ぎが必要となり、しかも所要時間は約1時間と距離の割に移動時間がかかってしまうからだ。そのため、住民の間でも旅客化を求める声が高まっていた。
この祈念号は地元有志たちで組織された「新金線いいね!区民の会」が中心となって企画したもの。同会では他にも沿線ウォーキングなどさまざまなイベントを行っており、多くの方に新金線のことを知ってもらい興味を持ってもらおうと取り組んでいるという。
ちなみに、首都圏の重要な通勤の足となっている京葉線や湘南新宿ラインも、もともとは貨物線が旅客化された路線。海外では貨物線をLRT(次世代型路面電車=ライトレール)として新たに活用するケースも複数ある。新金線もLRTによる旅客化を検討しており、さらに江東区でも貨物線「越中島支線」を利用した亀戸-新木場のLRT構想がある。
都心では31年度に羽田空港-東京間に「羽田アクセス線」が開業を予定している。新金線も都内東部の人口密集地の路線だけに開業が実現すれば、地域の交通の利便性がアップするのは間違いない。2030年代には首都圏で新路線の開業ラッシュなんて可能性もありそうだ。
(高島昌俊)
※画像は新金線を走るイベント列車(新金線いいね!区民の会提供)。第4回祈念号の申し込み開始は5月20日から。詳細は同会ホームページにて