韓国プロ野球で導入「AI審判」で早々に起きた「ボール」判定を巡る笑えないトラブル

 やはり野球にAI審判は馴染まないのか。今シーズンから公式戦でAI審判が導入された韓国プロ野球で、早々にトラブルが発生した。

「韓国プロ野球では主審と三塁塁審でAIが導入されました。グラウンドには審判員は立っているのですが、コンピューターがジャッジし、その音声を伝達された審判員がストライク、ボールなどを声に出しているんです」(現地記者)

 その判定だが、対戦チームの両ベンチにタブレットが用意され、どのコースに投球されたかもリアルタイムで表示されているという。表示法は日本のプロ野球中継でもお馴染みのストライクゾーンを9分割したものだ。

 そんな中、トラブルが起きたのは4月14日のNCダイノス対サムスン・ライオンズ。ベンチに置かれたタブレットでは「ストライク」判定だったが、審判は「ボール」をコール。両ベンチがそれに気付き、「タブレット誤作動か?」と首を傾げていると、2球続けて同じことが起きたのだ。

 当然ながらストライクをボール判定されたNCダイノスのカン・イングォン監督はベンチを飛び出し「どうなっているんだ!」と抗議。実はコンピューターに誤作動が起きたり音声が聞こえなかった場合、審判が独自にジャッジすることはペナントレースが始まる前に公表されているのだが、問題はここから。審判団が集まり協議をしたかのように見えたのだが、「(伝達のイヤホンから)ボールって聞こえたと言えよ」「そうしよう」などという審判団のコソコソしたやり取りがなぜか筒抜けとなり、それがネット上に拡散されたのだ。

 韓国の野球ファンはこれに憤怒。韓国野球委員会(KBO)も「あってはならないこと」と当該審判員たちに降格処分を下したのである。

 KBOの迅速な対応は立派だが、置き去りにされた課題もある。結局、ストライク、ボールをジャッジするAI機器は、誤作動を起こしたのだろうか。コールする主審の人的ミスならともかく、誤作動だとすればAI審判の精度は実戦レベルに達していないことになる。

「メジャーでは試験的に、マイナーリーグや独立リーグの試合にAI審判を導入しています。ミスジャッジをなくすため将来的なAI審判の導入は世界的な流れとなっていますが、まだ本番の公式で使用するには早すぎたのでは」(同)

 今回のような騒動が起きると、日本での導入もまだまだ先に思える。

(飯山満/スポーツライター)

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