2023年4月に再選を目指す現職市長に大差をつけて当選した元市職員の大泉潤函館市長。俳優・大泉洋の実兄でもある彼が、選挙公約の目玉として掲げていたのが北海道新幹線の函館駅乗り入れ、つまり「函館支線」の実現だ。
ちなみに現在の終点は、隣の北斗市にある新函館北斗駅。ここから17.9キロ離れた函館駅までは新幹線のダイヤに合わせて運行される「快速はこだてライナー」など在来線に乗り換える必要がある。約20分ほどかかるが、これが観光客には不評だった。
函館市は3月29日、技術的に乗り入れが十分可能であることや、整備費が173~186億円に収まるとする調査結果を公表した。今後はこの結果を踏まえて国や北海道、JRと協議に入る予定だ。
「特筆すべきは、秋田新幹線や山形新幹線のような在来線の線路を活用したミニ新幹線方式だけでなく、それ以外の高架を使うようなフル規格の新幹線でも見積もりの範囲内で収まると試算したことです。全線高架の場合は1000億円はかかると言われていただけに、この発表は関係者を驚かせました」(鉄道専門誌編集者)
3月26日には新潟市と県西部の上越地域を結ぶ、高速鉄道化に関する検討委員会が開かれ、ミニ新幹線化などの4案が示されたが、こちらの想定事業費は1200~2100億円。距離が長い分、費用が高くなるのは当然としても、函館支線のほうがケタ1つ少ない。
ただし、JR北海道の綿貫泰之社長は4月1日の会見で、「在来線として生きている線区なので、そういった課題にどう対応するのかも含めてお話を聞かないと」と述べている。また、鈴木直道北海道知事も5日の会見で「解決すべき課題がある」と慎重な立場を崩さない。
「問題の1つは車両の購入費用。調査報告書には盛り込まれていませんが、支線開業となれば当然必要になります。新幹線の場合、車両費は10両1編成で約50億円です。函館への乗り入れを想定していないJRが素直に応じるとは思えません。函館市が車両費全額、あるいは一部を負担する、という条件でなければ厳しいでしょうね」(前出・編集者)
もう1つ、根本的な問題もある。実は、北海道新幹線の新青森―新函館北斗間は繁忙期以外は利用客が少なく、ガラガラと言ってもいいような状況なのだ。ネット上には《乗り入れするほど需要があるとは思えない》などといった意見も少なくない。
乗り入れが実現すれば今まで以上に函館へのアクセスが便利になり、経済効果も期待されるが…。大泉市長の手腕が試されるのである。