【特別対談】蛭子能収×梶原しげる「認知症を生きる」(3)「バスはなるべく避けるようにしている」

梶原 認知症の薬はちゃんと飲んでいますか?

蛭子 血圧の薬と一緒に飲んでいます。

梶原 あれ? 私は今日飲んだかしら?

梶原(マ) ちゃんと飲んでいますよ(笑)。

梶原 よかった‥‥。認知症には新薬がありますけど、蛭子さんは飲んでいますか?

蛭子 飲んでいません。

——23年9月に日本で承認されたアルツハイマー型認知症の新薬「レカネマブ」。初期段階で投与することで、病状の進行を遅らせる効果が期待されている。ちなみに、飲み薬ではなく、注射薬である。

梶原 私は処方に向けた問診をやったばかりです。物忘れがどのくらい進行しているか、その具合を確認するチェックシートみたいなやつ。今は結果待ちです。効果に期待しています。

蛭子 でも、値段が高いんじゃないの?

梶原 一応、「高額療養費制度」を利用すればだいぶ費用は抑えられます。それでも、月に10万円以上はかかるみたいです。

蛭子 うわ~、たくさんお金がかかりますね。

梶原 世知辛いかぎりです。蛭子さんは老後資金に不安はありますか?

蛭子 心配しかないです。

梶原 でも、去年の個展で絵がたくさん売れたと聞きましたよ。

蛭子 え、そうなの? じゃあ、たくさんお金が入ってくるな~(笑)。

——昨年9月に「最後の展覧会」と題した個展を東京・青山で開催。なんと、1点30万~80万円もする作品が完売したというのだ。

梶原 どんどん絵を描いて稼がなきゃ!

蛭子 昨日も2~3枚描きました。でも、値段は俺に聞いてもわからんよ‥‥ん‥‥? 誰かケンカしているのかな?

——突然、外から聞こえてきたのは子供たちの「キャーキャー」という楽しそうな笑い声。認知症の影響で音に敏感になったのだろうか。一瞬だけ表情をしかめる場面があった。

蛭子 ちょっと怖いね。

梶原 にぎやかな声が聞こえてきましたね。近所の小学校が下校の時間になったんでしょう。

蛭子 小学生の声か(笑)。そういえば、(認知症の)初期の頃は、幻視に苦労しました。デパートに電車が走っていたり、会議室に火の玉が見えたりで‥‥。

梶原 私も「髪の長い女の人がいる」とよく周囲に語っていたみたいです。

蛭子 恐ろしいですね。ところであれは何だい?

梶原 私には何も見えませんが‥‥。

蛭子 あそこなんだけど‥‥、子供が2人いる。

梶原 そうですか‥‥よし! 気分を変えるために話を変えましょう。蛭子さんは欲しいものありますか?

蛭子 やっぱりお金です(笑)。

梶原 じゃあ、まだ引退できないわけだ。例えば、レギュラーで出てたテレビ東京のバスの番組(「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」)にはもう出ないんですか

蛭子 バス旅は難しいかな。バスは運転手やルートによって揺れが大きかったりして危ないので、なるべく避けるようにしています。でも、今日の帰りにでも乗りましょうかね。

梶原 隣に太川陽介さんがいないのが残念ですね。ところで、太川さんのことは覚えていますか?

蛭子 この人?(カメラマンを指さして)

梶原 違います(笑)。太川さんがカメラを構えた対談なんて豪華すぎますよ。いろいろ忘れないうちに3人でお話ししたいですね。

蛭子 ぜひ、バスの後部座席に並んでね(笑)。

「週刊アサヒ芸能」4月11・18日号掲載

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