【特別対談】蛭子能収×梶原しげる「認知症を生きる」(1)舟券の買い方がわからなくなって

 来年には700万人に達するとされる認知症患者。今年1月施行の認知症基本法には「国民の理解の増進」が盛り込まれているが、認知症になったら生活はどう変わるのか。当事者である漫画家の蛭子能収氏(76)とフリーアナウンサーの梶原しげる氏(73)が、気になる症状から医療体制、新薬まで語り尽くした。

梶原 お会いするのは3カ月ぶりぐらいですかね?

蛭子 うーん、どうでしょうかね‥‥。

——のっけから記憶を掘り起こす2人。実は3カ月どころか少なくとも3年は顔を合わせていない。

梶原 たぶん、ご無沙汰ですよね。お久しぶりです!

蛭子 こちらこそ‥‥あれ? これは何ですか?

ーーおもむろに手にしたのは対談を録音するボイスレコーダー。取材の現場ではよくある光景らしい。

梶原 これで私たちの声を録音しています。

蛭子 へぇ、こんなのがあるんだね(笑)。

——かつて2人は「SG競艇LIVE」(日本レジャーチャンネル)でたびたび共演。制作会社が主催する忘年会でも顔を合わせていたのだ。

梶原 確か明治記念館でお会いしていましたよね?

蛭子 言われてみれば、テレビや金券が当たるビンゴをやったような気がします。

梶原 最近は競艇場には行かれるんですか?

蛭子 何か下手なくせに‥‥うーん、何とも言えなくなりますね。ちょっと変ですけど‥‥何か変なんです。

——20年にアルツハイマー型とレビー小体型の認知症を公表した蛭子さん。公私にわたり通い詰めた競艇場からも、すっかり足が遠のいた様子。一生懸命に記憶を手繰り寄せながら言葉をひねり出す。

蛭子 たまにテレビのロケで行くぐらいになりました。プライベートでは、ほぼ行きません。

梶原 よく行っていたのはどこ?

蛭子 常連だったのは多摩川と平和島。あと、生まれ故郷の長崎にある大村にはよく行きましたよ。

梶原 競艇場ではお酒を飲みながら観戦するんですか?

蛭子 うーん‥‥、飲むと頭がグルグルって回ってしまうし、すぐに顔が赤くなっちゃうんで‥‥え、これは何ですか?

梶原 先ほどのボイスレコーダーですよ。私たちの声を録っています。

蛭子 そうですか(笑)。私は酒もタバコもやらないんです。もっぱら、競艇場ではホットコーヒーばかり飲んでいます。それこそ、真夏の暑い日でもアイスコーヒーは飲みません。

梶原 ゲンを担いでいるんですね。競艇場に行かないまでもお金を賭けたりしないんですか?

蛭子 ないです。お金を計算するのが苦手になって‥‥えっと、これは何ですか?(今度はボックスティッシュを指さす)

梶原 ティッシュです(笑)。

蛭子 あ、そうでしたか‥‥。ちょっと、ごめんなさい。何をやってんのかな俺‥‥これじゃ、おかしいと思われるやろうな‥‥。

梶原 大丈夫ですよ。私も同じ認知症ですから。

——梶原さんもアルツハイマー型認知症を発症している。22年4月頃から道迷いや物忘れの病状が出始め、23年9月放送の「徹子の部屋」(テレビ朝日系)で初公表した。

蛭子 えっと‥‥、ここ最近はギャンブルそのものをやめてしまいました。昔は電話投票でも買っていたんだけど、やり方がわからなくなっちゃった。ちなみに雀荘にもご無沙汰です。健康マージャンで通っていたんですけど、コロナの影響で行けなくなって‥‥。

梶原 難しいことができなくなるのは私も一緒です。もう、舟券を当ててドバッとお金が入ってきてもうれしくないんですか?

蛭子 そういうことだと思います。ギャンブルをやめてようやく勝てないことに気づきました(笑)。

梶原 トータルで勝ち負けの収支はどうですか?

蛭子 安く見積もっても1億円は負けています(笑)。

梶原 え、そんなに!

(つづく)

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