長生きしたけりゃコレで学べ!復活有名人「俺の闘病記」芸人・グレート義太夫(2)医師から「急に心臓が止まりますよ」

 こうして血液透析を選択。そのため、皮下で静脈と動脈をつなぎ合わせて太い血管を作るシャント手術を受ける。術後、1カ月間の入院で専用の食事を続けると、体重の増減が100グラムもないことに感動。ところが、週2回各1時間半の人工透析生活が順調だったのはスタートだけだった。

「退院後、自炊しなきゃと思って、ご飯を炊くじゃないですか。2合炊いて、釜飯の素とか入れてね。そしたら、おいしくて食べ切っちゃうんですよね。1日で? いや1食で(笑)」

 退院後、体重を計測すると2キロ増。「最低の不良患者です(笑)」と自嘲気味に話すが、味気ない病院食への反動には抗えなかった。

「マクドナルドを食べてしまうこともありました。僕ら透析患者にとって塩分過多は大敵。塩分で喉が渇くでしょ、すると水が欲しくなる。僕らは1日1リットルしか飲めないのに…」

 あっという間に人工透析の回数と時間が増加した。今では週3回の5時間ずつ。また血栓ができやすい体質のため、これまでに手術で作ったシャントを3度ダメにしている。4回目の手術で作った血管が「最後の砦」だという。ここにきて、やっと不良患者から更生、まっとうな糖尿病患者となった。

「『何を食べてもいいよ』と言われたら、うれしすぎて死んでしまうかも(笑)。そのぐらい、今は気を遣いながら生きていますよ。血液をサラサラにする薬も服用しているから、その飲み合わせもあって納豆はNG。それと生野菜もダメ。高カリウム血症をきたして『急に心臓が止まりますよ』と先生に言われました。だから最近は、野菜多めの一人鍋が多いかな…。もし36歳の『あの日』に戻れるなら、『お医者さんの言いつけをちゃんと守れ!』と自分に言ってやりたいですよ」

 後悔先に立たずということか。反省を重ねて今の日々があるとはいえ、厳しい食事制限と人工透析、ゲンナリしそうなところだが、そうでもなさそうだ。

「糖尿病初期の頃に『角砂糖を舐めて血糖値をコントロールするんです』と師匠に話すと、『おまえ、ボリショイサーカスの熊みたいだな』と突っ込んでくれて、気持ちが楽になりました。人工透析になったことを報告した時も、仕事を減らさなきゃいけないから怒られるかなと思ったんです。でも、師匠は笑いながら『夏目亭透析はどうだ?』って芸名を変えろと言うんです。イヤだったんですけど、今では落語で舞台に立つ時は夏目亭透析を名乗らせてもらっています。透析中の5時間はネタを考える時間をもらったとポジティブに捉えて生きています」

 まさに「芸は身を助く」なのだった。

(つづく)

グレート義太夫(ぐれーと・ぎだゆう)1958年東京生まれ。ビートたけしのバックバンドメンバーから「たけし軍団」に加入。以後、数多くのバラエティー番組に出演する。一方で蜷川幸雄演出の舞台で重宝されるなど多方面で活躍。そんな中、95年に糖尿病と診断され、07年からは人工透析治療を続けている。現在もボーイズ・バラエティー協会にも所属し、浅草フランス座演芸場「東洋館」の舞台に定期出演している。

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